ドイツ音楽市場2003年(9)

ドイツポップス、および国外ポップスの新発売点数および総発売点数

例によって、また画像でアップした統計を見て下さい。

先ず、この統計を見る際に注意しなければならないのは、この統計に含まれている数値は、ドイツ音響協会加盟の製造者の発売したCDだけであり、非参加業者や輸入盤を加味すると、約2倍程度になるのではないかと推測されています。


先ず、新しく発売されたドイツポップスのシングルの発売点数ですが、2002年の1659点から1340点へと大きく減少しています。新発売ドイツポップスアルバムも、2002年の3870点から3182点へと減少しています。

この調査では、この新発売点数の減少を、音楽製品の売り上げ低下により、新たな投資が難しくなったためと分析しています。そして、違法コピーが、ミュージシャンの収入や企業の新しいアーティストへの投資額を減らし、音楽の多様性を損なっているとしています。

ただ、もっとタイムスパンを長く見ると、この考えは、少々怪しくなります。というのは、2003年のドイツ国内の新発売ポップスのシングル、およびアルバムの点数は、過去の都市と比べて、とりたてて劣るわけではないからです。以前見たように、ドイツでのCD売りあげが急激に落ち始めたのは、2001年からですが、2001年、2002年は、シングル、アルバムの発売点数とも200年より増加しています。特にアルバムに関しては、過去最高の発売点数になっています。

そのため、この統計を見る限りでは、全体の売り上げの上下が、そのまま発売点数の増減に繋がるわけではないと言うことが分かります。


国外ポップスの新発売点数は、シングルは前年比微増アルバムも前年比約8%と増加しています。売り上げが急速に落ち始めた2001年以降は、逆に急速に発売点数が増加しています。もしかすると、余り新たな投資が要らない国外のシングルやアルバムの発売点数を増やして、売り上げ減少をカヴァーしようとしたのかもしれません。また、過去10年の数値を見ても、シングル、アルバム共に着実に増加しており、特にアルバムは、10年で約1.6倍に増加しています。


国内ポップスシングル全発売点数を見てみると、2002年から2003年に書けて、約1000種類も減少しています。これを見ると、新発売点数が減少すると同時に、旧譜が大量に廃盤になったことが分かります。

また、新発売ポップスシングルの全発売点数に対する割合を見てみると、2000年以降は新発売シングルの比率が、それ以前の8〜9割から6割程度までと、かなり下がっているのが分かります。長期的に見ると、ここ数年は、以前と比べると、廃盤率が下がってきたことが読みとれます。


一方ドイツ発売のポップスアルバムについて見てみると、総発売点数は18368点であり、前年から若干増加しています。新発売CDの点数は減少しているので、廃盤になるCDの点数が減少したことになります。

シングルの総発売点数がこの10年でそれほど変化していないのに対し、アルバムの総発売点数は、この10年で約二倍に増加しました。アルバムは新発売点数も増加傾向にあるものの、総発売点数と比較すると、遙かに増加率は低いので、廃盤率が下がっていることが推測されます。そのため、総発売点数に占める新発売アルバムの比率は、17.3%と過去10年で最も低い比率になっています。


国外ポップスのシングル総発売点数は2537点であり、前年比微減です。しかし、2001年以降の総発売点数は、過去10年の中でも最も高い水準にあります。この高い水準を支えるのは、新発売点数の増加と、廃盤率の減少の両方だと推測できます。そのため、総発売数に占める新発売シングルの割合は、以前と大きく変化していません。

国外ポップスアルバムの総発売点数は27212点で、前年比で約17%増と大幅に増加しました。この発売点数は、この10年でも、2001年と並び、最も高い数値になっています。国外アルバムの総発売点数もこの10年で約2.5倍に増加しています。そのため、新発売の国外アルバムが、総発売点数に占める割合もまた19.1%と非常に低い水準になっています。


基本的に、国外、国内問わずシングル、アルバムとも、総発売点数は増加傾向にあり、特にアルバムではその傾向が著しいことが分かります。ドイツ法人が自分たちで投資しなければならない国内盤では、売り上げ減少が効いて効いてきたせいか、2003年には新発売点数が減りました。しかし、長期的には、アルバムに関しては、国内、国外問わず、新発売点数は増加傾向にあると言えます。にもかかわらず、総発売点数の伸びがさらに大きいため、全体で見ると、新譜の比率は着実に下がってきています。

ただし、この発売点数が、新譜と旧譜の売上の比率と、どのようにかかわっているかは、残念ながら統計がないので分かりません。過去10年の総発売点数を見ても、総発売点数と、売り上げには直接の関係がないことは見て取れます。しかし、これまで見てみたように、おそらく現在の売り上げ減少は主に新譜によるものであると推測できるので、おそらく単に総発売点数に占める新譜の割合の減少と同様、売り上げの重心が、新譜から旧譜に移ってきているのではないかと推測できると思います。

実際、現在のドイツの音楽市場でも、最も売れている10%の音楽製品の売り上げが、残りの90%を支えているようなので、やはり新譜の大ヒットが出ないと、売り上げ的には厳しいのでしょう。