ドイツ音楽市場2003年(10)

毎度ながら、更新が遅れてすいません。統計を自分でEXEL で打ち直しているので、どうしても時間が掛かってしまっていけません。長らく続いた2003年ドイツ音楽市場の統計の紹介も、今回でようやく最終回です。


トップ100における国内シングルと国外シングルの割合

例によって、また画像でアップした統計を見て下さい。

チャートのトップ100に占めるドイツの国内シングルと国外シングルの割合を長期的に見ると、国外盤が約8割のシェアを占めていた1992年をピークとして、国外盤の占める割合は次第に減っていきます。そして、1997年にほぼ国内盤と国外盤が半分ずつシェアを分け合うようになります。その後、2000年までは国外盤が若干高いシェアを占めますが、2001年に再び突然国外盤のシェアが10%以上跳ね上がり約65%まで上がります。しかし、2002年、2003年と急速に国内盤のシェアが跳ね上がり、2003年にはついに歴史上始めて国内盤が国外盤を逆転し、約55%という高いシェアを占めるようになりました。

残念ながら、この比率の変化が何故起こったのかは、私には分かりません。この15年の傾向は、一時期若干揺り戻しがあったとはいえ、国内盤のシェアが着実に上がっていくというものです。次に見るように、この傾向は、アルバムには当てはまりません。シングルとアルバムのチャートの性質の違い、個々の年のヒット作の傾向などを総合して考えないと、この変化の理由は分からないので、これは私の手には余ります。そのため、詳細な分析はできないことを、ご了承下さい。

ただ、2002年から2003年の国内シングルのシェアの上昇は、2003年に大流行したテレビのオーディション番組のブームが関わっていると思います。日本でも以前、歌手志望の一般人を集め、オーディションをし、選抜の過程、またレッスンの過程を放映した「ASAYAN」などの番組がありましたが、2003年にはこのようなオーディション番組が、ドイツで爆発的な人気を呼びました。

テレビ局は、それぞれ競うようにオーディション番組を放映し、数多くの歌手がこれらの番組からデビューし、ヒットを飛ばしました。私は2003年の年間シングルチャートをきちんと見ていないので、なんとも言えませんが、まあ一つの仮説と言うことでご容赦下さい。


トップ100におけるドイツ国内アルバムと国外アルバムの割合

先ず、チャートのトップ100に占めるドイツ国内アルバム、国外アルバム、サウンドトラック、コンピレーションアルバムの割合を長期的に見てみます。圧倒的なシェアを誇っているのは、一貫して国外盤です。しかし、90年代初期の60%代から次第にシェアが落ちていき、98年には一度40%を切るまでになりました。その後は、再び若干シェアを取り戻し、2003年まで40%代の中で推移しています。

国外盤のシェアの低下に反比例し、99年までシェアを伸ばし続けたのがコンピレーションアルバムです。90年代初頭には10%代前半のシェアしか持たなかったコンピレーションアルバムは、2000年には30%を超えるなど10年で倍以上にシェアが伸びました。しかし、ここ数年はシェアを減らしており、2003年には20%弱のシェアになりました。

国内アルバムは、90年代初頭のシェアが10%代後半だったのが、94年には20%代まで上がり、その後は20%から30%までを上下しています。ここ数年は急速にシェアが上昇しており、2003年にはシングル同様これまでで最大のシェアとなる約30%まで上昇しました。

全体的に見ると、やはり90年代を通じて、国外盤がシェアを減らし、コンピレーション、国内盤がシェアを増やしていったと言って良いと思います。ただ、2001年のCD 売り上げの劇的な低下に従い、コンピレーションアルバムのシェアは低下を続け、その分国内盤のシェアが増大しています。すでに国内盤と国外盤のシェアが逆転したシングルとは異なり、アルバムではまだかなりシェアに差がありますが、おそらく2004年にはさらに差が縮まっていることが予想されます。


今回の統計を見れば分かるとおり、長い間ドイツの音楽市場は、シングル、アルバム共に国外盤、要するに英米のポップスを中心に回ってきました。また、ドイツ産のポップスでも、その多くは、ドイツ語ではなく、英語で歌われてきました。そのため、長い間ドイツ人は、自国産、あるいは自国語のポップミュージックを聴く機会が非常に少なかったと言えます。邦楽が圧倒的なシェアを誇り、洋楽が余り売れていない日本とは全く反対ですが、日常的に耳にする音楽が、他国産、あるいは他国の言語によるものであることが、ドイツでは当たり前でした。

何故、元々英米の音楽がここまでドイツに浸透したのか、また何故90年代以来国外盤がシェアを徐々に減らし、国内盤がシェアを伸ばしてきたかについても、残念ながら私には分かりません。やはり、長期的な変動を分析するためには、ポップス史的な知識が必要となるので、外国人である私にはなかなか分かりかねます。


これで全て紹介しましたが、余りに長すぎたので、次回これまでのまとめをやって、全て終わりにしたいと思います。