ドイツ音楽市場2003年(まとめ)

これまで10回に渡ってDie deutschen Phonoverbände ドイツ音響連盟のサイトに掲載された2003年ドイツの音楽市場に関する統計をご紹介してきました。紹介した分量が余りに多すぎるので、最後に簡単にまとめておこうと思います。


売り上げ

2003年のドイツの音楽製品の売り上げは、約16億5000万ユーロ、日本円で約2200億円ほどです。これは、アメリカの約六分の一日本の半分くらいの金額です。また、ドイツ人は、余りCD を買わないらしく、人口一人当たりの購入枚数が他の国よりかなり低いです。

ドイツの音楽製品の売り上げは、2000年まではわりと安定していましたが、2001年から年10%を超える急激な売り上げ低下に襲われました。この調査では、この売り上げ低下は、CD-R による違法コピーやインターネットの違法ダウンロードによるものだと考えています。

ドイツのCD の価格は、この10年余り上がっておらず、ヨーロッパで最も低い水準にあります。

季節による売り上げの変化を見ると、5月から8月の夏が売り上げの底で、9月から12月が売り上げのピークになっています。月で言うと、7月が底、11月がピークです。

ドイツでは、ジャンル的にはポップス、ロック、ダンスミュージックなどのポップミュージックが60%以上の売り上げを上げています。それに続くのがSchlager シュラーガー(ドイツの演歌)の約9%、クラシックの約7%になっています。


販売数

2003年の音楽製品の販売数は約1億8000万枚で、その大半はCDアルバムです。全体的に売り上げは落ちていますが、特に落ち込みが激しいのがシングルで、2003年の売り上げ枚数は、3年前と比べ約半数まで落ち込みました。

CDアルバムの売り上げを価格別に見ると、高価格CDの売り上げが最も多く、中価格CD低価格CD の売り上げはだいたい同じくらいです。高価格CD はおそらく新譜で、その売り上げ数は中価格、低価格CD の約2倍です。しかし、高価格CD は売り上げの低下が激しく、逆に中価格、低価格CDの売り上げは比較的安定しています。

また、一時期中、低価格CD を売り上げ枚数で上回っていたコンピレーションアルバムは、どんどん売り上げが低下し、すでに中、低価格CD を下回っています。

シングル、高価格アルバム(新譜)、コンピレーションアルバムの売り上げが特に激しいことから、新譜の売り上げの低下が著しく、旧譜の売り上げはそれほど減少していないということができると思います。


購入者

一年の購入枚数が10枚を越える大量購入者約4%しかおらず、4〜9枚購入する人が約一割、1〜3枚購入する人が25%、残りの6割以上は、全く音楽製品を買わない人たちです。音楽製品を沢山買う人は年々減少しており、逆に何も買わない人が次第に増えています

しかし、数的には非常に少ない大量購入者が、全体の売り上げの約4割を占めるなど、ドイツの音楽市場を支えています。しかし、大量購入者は次第に減少しており、そのため彼らによる売り上げが市場全体に占める割合も、次第に減少しています。


年齢層

購入者を年齢別に見てみると、30代が最も高い割合を占めています。その次の20代と合わせると、市場の約半分を占めることになります。10代は、市場の一割強を占めるだけです。

CD の購入者の割合が多いのも30代、次に20代で、ドイツの音楽市場の中心は、30代、20代だと言えると思います。


発売点数

長期的に見ると、国内盤、国外盤問わず新発売アルバムの種類は増加傾向にあります。また、国内盤、国外盤問わず、アルバムの総発売点数も増加傾向にあります。しかし、国内新発売シングル、アルバムの点数は、2002年から2003年にかなり減少しました。一方新発売国外シングル、アルバムの点数は増加しています。総合的に見ると、基本的には、新発売点数や総発売点数と、売り上げには、余り関係がないと推測できます。


国外盤と国内盤の割合

元々ドイツでは、シングル、アルバム問わず、国外盤、つまり主にアメリカやイギリスのCD のシェアが、国内盤を圧倒していました。しかし、この10年、次第に国外盤のシェアが減少し、国内盤のシェアが上がってきています。特に、2003年は、歴史上始めてシングルで、国内盤のシェアが国外盤を超え(約55%)、アルバムも、歴史上最も高い割合(約3割)を占めるようになりました。

まだ、統計は発表されていませんが、ドイツ語ポップスがブームになった2004年は、さらに国内盤のシェアが上がっていると想像できます。


と、これまでの記述を、簡単にまとめてみましたが、いかがでしたでしょうか。私がドイツの音楽市場について紹介しようと思ったのは、日本の音楽市場を考えるときに、アメリカだけではなく、他国の音楽市場も参照した方が、現在先進工業国で起こっている音楽市場の変動について良く分かるのではないかと思ったからです。そういう意味では、誰かが日本の音楽市場との比較に私の紹介を使ってくれれば嬉しいし、いずれにせよ、自分でも後でドイツと日本の音楽市場の特徴の違いについて検討してみたいと思っています。


散々お待たせいたしましたが、ようやくこれから、具体的にドイツのポップス界には、どのようなアーティストがいるのかをご紹介していこうと思います。ただ、ミュージシャンの名前を羅列するだけでは余り面白みがないので、できるだけ、ドイツの音楽シーンがどんなものなのかが分かるようなかたちで紹介したいと思います。そのため、おそらく、ジャンル毎にある程度まとめて紹介することになると思います。まあ、私もそれほどこちらのポップスに通じているわけではないので、限界はありますが、とりあえずやってみるとことにします。

一番最初には、これまで断片的にお伝えしてきたドイツ語ロックニューウェーヴについてご紹介しようと思います。元々この流れについて紹介したくて、この企画を始めたので、ようやく目的地までたどりついたという感じがします。これまでは簡単な説明で、お茶を濁していましたが、今後Wir Sind HeldenMiaVirginia Jetzt などのバンドについても、詳しくご紹介するつもりですので、どうぞご期待下さい。これまでの紹介は全部前振り。これからが、本番です。