ステファン・エリオット監督『プリシラ』1994年

プリシラ』を見ました。この映画は、3人のドラッグクイーンが、オーストラリアの広大な砂漠を突っ切って、興行先のホテルを目指すというロードムービーです。3人の主人公は、ド派手な衣装に身を纏っており、始終賑やかに冗談を言ったり、踊ったりしているので、非常に華やかな映画になっています。

内容的には、ゲイが特に田舎で差別を受けており、3人はそれに心傷めつつも、それぞれ楽しくも切ない人生を生きているという人生模様を描いていたと思います。ミッチは、ゲイであるにもかかわらず結婚して子供もおり、興行先で妻と子に再開します。彼は、子供の本当の姿を軽蔑するのではないかと不安を感じていますが、彼の息子は彼がドラッグクイーンをやっていることを何とも思っておらず、彼は息子をしばらく自分で育てることになります。

ミッチの奥さんは、彼がゲイであることを何とも思っていない剛胆な女性で、この母にして、あの子供ありという非常に度量の大きな、魅力的なキャラクターになっています。

バーナデットは、落ち着いた性格をしていますが、長年差別と戦ってきた年長者らしく、いざという時は頼れる男です。フェリシアは、年少者らしく、悪戯好きで、お調子者で、派手好きです。

また、この映画には、旅の最中で、色々な人々が彼らと出会うことになります。砂漠の真ん中で彼らのバスが故障したとき、彼らはアボリジニの一団と出会い、いっしょに踊ります。また、バスを修理してくれた田舎町の老人は、バス修理要因としていっしょに旅をすることになります。彼はアジア人娼婦に押しかけ女房されたり、バーナデットと恋仲になるなど、やはりおおらかな心の持ち主として描かれています。彼の奥さんは、娼婦でストリッパーのアジア人で、知的障害者のような描かれ方がされていました。また、ミッチの奥さんは、元々はレズビアンだったようです。

このように、この映画では、社会的なマイノリティーが色々出てきて、マイノリティーであるゲイと関わっていきます。彼らは、基本的に主人公たちに敵対的でないので、マイノリティー同士は互いのマイノリティーとしての属性を余り気にしないものとして描かれていたと思います。

逆に白人というマジョリティーは、マイノリティーであるゲイに対し敵対的な態度を取ることが多かったです。

全体としては、最初に本拠地の酒場でのショーに不満を持っていた主人公たちが、旅をする中で、自分たちはいかに多くの人々から受け入れられない存在かを思い知らされ、本拠地に戻り、自分たちを歓迎してくれる客を前にして、自分たちのいる場所はここだと再確認するという構成になっていると思います。

マイノリティーの生き様を、ド派手で生き生きとした描写で描き出した、楽しくも切ない素晴らしいエンターテイメント映画になっていると思います。


プリシラ [DVD]

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