ダンスPVのネクストステップ?

最近のニコマスMADは、技術のインフレ具合がとどまるところを知りませんが、その中でもおっぺけPの新作は、驚愕のクオリティーで唖然とさせられました。


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おっぺけPのこの作品は、抜きやエフェクトは隠し味程度に抑え、ダンスの編集をメインとした作品になっています。この作品の凄さは、その極めて高度な編集技術にあります。私は、最近のニコマスMADを見て、分かりやすい765コマンドやエフェクトだけでなく、全般的にカメラやカット割りなどの基礎的な編集技術がどんどん上がっているのではないかと感じていましたが、この作品はそのような編集技術の粋を尽くして作られた作品だと言えるでしょう。

この作品を見て私が思い浮かべたのは、この間のSMC の30秒本選に残ったA-3とD-1の2作品です。


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おっぺけPの作品、A-3、D-1は、765コマンドやエフェクトは控えめに使ったダンス中心の動画です。これらの動画では、基本的にダンスのワンモーションを1カットにしています。従来のダンス中心の動画では、異なったダンスの様々な動きを編集で繋げるにせよ、オリジナルのダンスのモーションをそれなりに長く見せるのが普通です。しかし、これら3つの作品では、オリジナルのダンスは、ほとんど一つ一つの単純な動きにまで分解され、ほとんど原型をとどめていません。また、一つの動きをさらに複数のカットの組み合わせで見せている場面もあります。そのため、これらの作品では、カットの切り替えが非常に早く、普通のMAD動画と比べて、著しくカット数が多くなっています。そのため、これら3つの作品では、従来のダンスシンクロの技術というよりは、カットの繋ぎという編集技術でダンスを魅力的に見せていると思います。

つまり、普通のダンス中心の動画がオリジナルのダンスを有る程度尊重して作られているのに対し、これら3作品ではオリジナルのダンスはほとんど解体され、単純化された個々の動きを編集によって組み合わせるなど、作り手のコントロールの度合いが飛躍的に増しています。

同じことは、カメラにも言えます。普通のダンス中心の動画のカメラ移動やアングルが、ゲーム内のダンスシーンのカメラ移動やフレームそのままであるのに対し、おっぺけPの作品とA-3では、作者が自分でカメラを動かし、ゲームではありえないカメラ移動やフレームを実現させています。

そのため、これら3つの動画は、単にゲーム内の映像を切り張りするだけでなく、ダンス、アングル、カメラ移動、フレームまで作者の思い通りにコントロールしている、極めて高度な編集技術が使われた動画だと言えます。

最近は、主に自作ステージや派手なエフェクトが使われた動画が技術のインフレ動画として目立ちますが、自作ステージやエフェクトは、ニコマスMAD全般で進展する、作者のコントロール領域の拡大の一側面に過ぎないのではないかと思います。最近のわかむらPの作品も、自作ステージだけでなく、カメラ移動やカット割りも凄いわけです。最近のニコマスMADは、撮影、カメラ、照明、美術、特殊効果、色彩設計まで作者がコントロールする傾向にあるので、普通の音楽PVの制作と余り変わらなくなってきていると思います。そのような様々な技術を必要とする動画を、多くのプロデューサーが平気で作るようになっているのですから、ニコマスのプロデューサーの技術インフレの進み具合は凄いものがあると思います。

上の3つの動画を見ると、ダンス中心の動画であっても恐ろしく手の込んだ編集技術が使われるようになっており、ニコマスMADプロデューサーの編集技術の水準が恐ろしく上がっていることを感じます。


(11/19追記)

おっぺけPの作品を見返したところ、個別的な動きをカットインする部分は結構あるものの、全体的には普通のダンスPV と比べて、それほど動きをバラバラにしているというわけでもないようです。おっぺけPは、同じダンスをカメラやアングルを変えて何度も撮影し、ダンスのシークエンスを複数のカットで見せています。そのため、普通のダンスPVと比べて、カット数が極端に多く、通常のダンスシンクロで見せるというよりは、編集技術で見せるという印象が強くなったようです。しかし、凄い手間をかけて作ったものだと感嘆します。