2004年ドイツアルバム年間チャート
皆様明けましておめでとう御座います。今年も、よろしくお願いいたします。
新年最初の更新は、新年らしく、昨年を振り返る話題として、2004年のドイツの年間チャートを紹介しようと思います。
Media Control 調べの2004年ドイツのアルバムチャートの一位は、Anastacia の『Anastacia』でした。彼女は、アメリカのエンターテイメントシンガーですが、アメリカでは余り大物という気がしないのですが、ヨーロッパでは絶大な人気を誇っています。
音は、R&B 風ポップスという、白人系エンターテイメントシンガーの王道という感じで、ハスキーな濁声で歌い上げるという歌唱をしています。彼女は、パッと見は、いかにもグラビア雑誌に出てきそうな、金髪美人という感じなのですが、たいてい眼鏡を掛けています。眼鏡を掛けた金髪美人というのは、余り見かけないので、それが彼女の個性というか、売りになっています。あとは、鍛え上げた腹筋も売りで、男性グラビア誌でも、表紙を飾っていました。
アメリカの年間アルバムチャート(Billbord) では、100位にも入っていませんが、ドイツでは1位になるので、やはりアメリカとヨーロッパのチャートの傾向は、少しずれていることが分かります。
年間2位は、Norah Jones の『Feels Like Home』です。Norah Jones は、一作目の『Come Away With Me』も年間16位に入っており、安定した人気を保っています。チャート上位で、大人も聴ける音楽というのは少ないので、高年齢層が地道に買い支え、ロングヒットになるという感じでしょうか。
年間3位は、ドイツのベテランポップデュオRosenstolz ローゼンシュトルツ の『Helz』です。今年は、アルバム、ライヴDVDが出て、シングルの「Liebe ist Alles」と「Willkommen」が掛かりまくったし、大活躍の一年でした。
年間4位は、なんと新世代ドイツ語ロックバンドのトップランナーWir sind Helden ヴィア・ズィント・ヘルデンの『Reklamation』が入りました。とは言っても、このアルバムが発売されたのは、2003年の7月で、それでこの順位というのは驚きました。ドイツは、日本と比べると、遙かにチャートアクションが長いし、ロングセラーも多いのですが(というか、日本のチャートアクションの短さが異常)、それにしても長く売れたものだと思います。
年間5位は、Nelly Fartado の『Folklore』です。このアルバムも2003年11月発売ですから、チャートアクションがかなり長かったと言えます。Nelly Fartado は、Moloko などと並んで、音楽的なチャレンジを行いつつも、メジャーシーンでヒットを飛ばせる希有なポップスのミュージシャンです。革新性と大衆性を合わせ持つというと、今はヒップホップの独壇場ですが、彼女のようなポップミュージシャンが、これだけ売れているというのは、喜ばしいことだと思います。
年間6位は、カナダ出身らしいが、ドイツバンド扱いのロカビリーバンドDick Brave & the Backbeats の『Dick This!』 です。このアルバムも、2003年の11月発売です。何故、ドイツで50年代そのままなロカビリーバンドがこれほど売れるのかは良く分からないのですが(別にドイツで、ロカビリーそのものが人気な訳ではありません)、非常に売れたようです。
年間7位と9位は、イギリスと言うよりも、ヨーロッパ最大のスーパースターRobbie Williams の『Greatest Hits』と『Live Summer 2003』がそれぞれ入りました。『Greatest Hits』は、2004年の年末商戦で投入されたばかりなので、ほぼ一月で年間チャートのトップテンに入ったことになります。
ほぼ同時期に発売されたアメリカのスーパースターであるEminem の『Encore』が年間チャートでは63位にとどまったことを見ても、Robbie Williams のベスト盤の売り上げがいかに凄かったが分かると思います。日本にいると、Robbie Williams の曲を聴く機会はほとんどないと思いますが、ヨーロッパでは、とにかくもの凄いスーパースターなのです。
8位には、イギリスのシンガーソングライターDido の『Life For Rent』が入りました。このアルバムも、2003年9月の発売ですので、凄いロングセラーだったことが分かります。彼女は打ち込みも使っていますが、基本的にはNorah Jones と同じように、静かにゆったりと聴ける音楽なので、高めの年齢層まで幅広い支持を集めたのだろうと思います。
10位には、なんとEvanescence の『Fallen』が入りました。このアルバムが発売されたのは、2003年の3月ですから、ロングヒットするにもほどがあります。しかし、今年もシングルカットは続いていたし、継続的に露出し続けた成果でしょう。
ちなみに、今年のドイツのロックの一つのトレンドは、Evanescence のような女性ヴォーカルのゴシック風ヘヴィーメタルでした。他にもオランダのハイトーンヴォーカルのヘヴィーメタルバンドWhithin Temptation や年間チャートの20位にも入ったフィンランドのNightwish なども、大いに活躍しました。
ただ、 Evanescence が、ヘヴィーメタルといっても、あくまでKorn やLimp Bizkit のようなヘヴィーロックやラップロックを通過した音であるのに対し、ヨーロッパのメタルバンドは、80年代的なサウンドをそのまま保っていると言うことで、音の傾向はかなり異なっています。
10位まで見て気づくのは、ドイツのアルバムチャートの上位には、アメリカの有名アーティストが余り入らなかったことです。アメリカ出身のAnastacia やカナダ出身のNelly Furtado もいますが、彼女達は、アメリカのトップ中のトップというほど売れているわけでもありません。また、Evanescense のアルバムは昨年のアルバムなので、今年発売のアメリカの有名アーティストのアルバムは、Norah Jones 以外はドイツでは余り奮わなかったことがわかります。
アメリカの年間一位のUsher はドイツでは年間17位、アメリカ年間2位のOutKast はドイツでは67位、アメリカ4位のAlicia Keys は、ドイツでは53位と大きな差があります。
トップ30に入ったアメリカの有名アーティストは、14位のAvril Lavigne、15位のThe Black Eyed Peas、25位のMaroon 5 くらいで、かなり少ないと言えます。そのため、今年のドイツのアルバムチャートは、アメリカよりはイギリス、ドイツなどのヨーロッパ寄りのチャートであったと言えると思います。
また、10枚のアルバムのうち6枚が2003年発売だったので、非常に息の長い売れ方をしたロングセラーアルバムが、上位に上がったと言えると思います。
トップ10に3つのアルバムが入ったドイツ勢ですが、以下20位までを見ると、11位にパンクバンドBöhse Onkelz ベーゼ・オンケルツの『Adios』、12位にR&B バンドSöhne Mannheims ゼーネ・マンハイムの『Noiz』、13位にこのサイトでも何度も紹介しているポップロックバンドSilbermond ジルバーモントの『Verschwende deine Zeit』、18位にグランジバンドRammstein ラムシュタインの『Reise Reise』 が入りました。20位まででは、7つのアルバムがチャートインしています。
以下30位までを見ると、22位にゴシックメタルバンドOomph! オームフ! の『Wahrheit oder Pflicht』、23位にSchager(ドイツの演歌)シンガーAndrea Berg アンドレア・ベルクの『Best of』、24位にポップパンクバンドSportfreunde Stiller シュポルトフロインデ・シュティラーの『Berli』、29位にSilbermond のライバルJuli ユーリの『Es ist Juli』、30位にベテランヒップホップグループDie Fantastischen Vier ディー・ファンタスティック・フィアの『Viel』が入っています。30位までには、12枚のドイツポップスアルバムが入っています。
ちなみに2003年の年間チャートで30位までに入ったドイツポップスのアルバムは7枚だったので、かなり増えていることが分かります。
全体的には、ジャンル的に言うと、ポップスやロック、ヘヴィーメタルが多く、R&B やヒップホップが少ないと言えると思います。アメリカのチャートでは、上位をほとんどヒップホップが占めていますが、ドイツのアルバムチャートでは、ヒップホップは上位に来ていません。現在アメリカでは、ロックは全然人気がなく、R&B やヒップホップ中心なので、それらのジャンルがそれほど好まれていないドイツでは、アメリカの有名アーティストが上位になかなか食い込めないということなのでしょう。
でも、ドイツでも、R&B やヒップホップは人気あると思っていたのですが、アルバム単位で見ると、案外人気がなくて以外でした。