『NANA』

NANA -ナナ- スペシャル・エディション [DVD]

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NANA 2』のプロモーションで、『NANA』がテレビでやっていたので、後半だけ見ました。私は、てっきりこの映画は、先鋭的な風俗を取り込んだおしゃれ映画になっているのだろうと思いこんでいたのですが、非常に泥臭い映画だったので驚きました。一昔前の日本映画という感じのどんよりした画面の質感、のったりした編集を見ただけで、これは、駄目な大作日本映画という雰囲気が漂っていました。何故こんな野暮ったい映画が、大ヒットしたのでしょうか?昔は、この手の映画は全く稼げなかったわけですが、『スウィング・ガールズ』と言い、日本映画のヒットの仕方が、昔と大分変わってきたような気がします。

話は、前半は見ていないので良く分かりませんが、彼氏など周りに流されているモテ系の主人公が、恋においても仕事においても自分を持っているパンクロッカーに憧れ、自分らしく生きようと決意するというような、自分探し/自己実現系だったように思います。自己実現している人間のモデルがパンクロッカーという、気恥ずかしいほどベタベタな設定ですが、このような設定は、一部ではまだアクチュアルであるように受け止められているようです。みなさん、「ワーキングプア」についての番組を見ていないのでしょうか。また個人的には、ナナが、元彼のバンドを超えてやるという時のその「超える」が、単により売れてやるというだけの意味であることに、非常に脱力させられました。

ナナのバンドのファッションや音楽は、全くアンダーグラウンドさを感じさせず、ビジュアル系、ビートパンク、パンクが微妙に混ざっている、なんとも言えず、違和感に溢れた、微妙としか言いようがないものでした。ナナの元彼が所属するバンドに至っては、ロックですらなく、普通のポップスをやっていました。個人的には、この映画の監督や音楽担当、スタイリストは、余り現在のポップミュージックに関心がない人なのだろうと思いました。この映画の音楽部分を見て、私が思ったのは、こういう大作映画は、レコード会社とのタイアップがどうのこうの面倒な縛りが沢山あり、その結果としてこういうおかしなことになってしまうのだろうということでした。

ライヴの場面は、切り替えの遅い編集、のったりしたクレーン移動など、ロックやパンクの勢いを全く感じさせないもので、何でこんな編集になったのか、全く理解できないようなものでした。余りにも普通のライヴやPV の撮り方からかけ離れていたので、かなりシュールで、面白かったです。

役者も、ナナ役の中島美嘉を除いては、ミスマッチとしか思えないようなもので、事務所との関係とか、色々あるのだろうなとか、考えさせられました。

映画としては、可もなく不可もなくという、娯楽映画として無難な出来だったと思います。ただ、たとえば『下妻物語』を撮った監督がこの映画を撮れば、もっと遙かに面白い映画になったし、それが本来のあり方だったような気もしますが、この撮り方で大ヒットしたので、そんなことはなく、やっぱりこれで良かったのでしょう。