アウトサイダーアートは、頭のおかしい人の美術ではない

ダーガーをはじめとしたアウトサイダーアートが最近アングラの世界から表に出てきているような気がして、自分の中では、蛭子さんのマンガが人間全体の美意識になりつつあるのかとかんじて、最近怖くかんじていてB面の方にそんなことをつらつら書いていました。

二十面相通信


このような心配は、ほとんど必要がないではないのではないでしょうか。というのは、そもそも現代アート自体が、ほとんどの人の生活とは全く関わりがないマイナーなものですし、その中でもさらに周辺に位置するアウトサイダーアートが、メジャーになることはありえないでしょう。そもそも、大半の人の美意識では、20世紀以降のファインアートでさえ理解不能なので、アウトサイダーアートが人間全体の美意識になることは、ありえないのではないでしょうか。

また、アール・ブリュットアウトサイダーアートは、別に心に病がある人や、知的障害者によって制作されているとは限りません。たとえば、アウトサイダーアーティストの代表者の一人であるフェルディナン・シュヴァルは、郵便配達夫として働き、結婚して、子供もいたごく普通の人でした。また、アウトサイダーアートの全てが禍々しいわけではなく、かわいらしい作品も沢山あります。

アールブリュットやアウトサイダーアートという概念の有効性は、元々は文脈依存的な既存の美術に対する異議申し立てだったと思います。しかし、それまで美術市場に参入できなかったアーティストや、彼らの作品を、美術市場に組み込むことを可能にしたことも、大きな有効性だろうと思います。