細田守監督『時をかける少女』

昨年公開され話題になった『時をかける少女』をようやく見ました。話は、男子二人と仲良くしている主人公の少女が、タイムリープする能力を身に付けて、日常の些細なことに使っていたが、思いもよらぬ結果を引き起こしたため反省するというものです。

基本的には、甘酸っぱい青春もので、何が契機になって物事が起きるか分からないので、都合の悪いことをなかったことにしないで、今を一生懸命生きましょうとか、人が真面目な話をしているときは、真面目に聞きましょうとか、大変教訓に富んだ成長物語だと言えます。

アニメーション技術的には、書き込んだ背景に、影なしのキャラクターを乗せるという手法を使っています。トレス線が茶色だったり、太かったりするので、キャラクターはかなり背景から浮き上がって見えます。影なしのキャラクターは、デザインをシンプルにして動きを強調する、あるいはシルエットを強調するためのものだと思いますが、効果を上げていたかどうかは不明です。

個人的には、トレス線をもっと細くして、影を付けて、背景にキャラクターを馴染ませた方が良かった気がするのですが、実際にはそういうものでもないのでしょう。

この作品の最大の特徴は、丁寧な演出でしょう。台詞やキャラクターの芝居が綿密に作られているので、キャラクターの感情が観客にきちんと伝わり、そのため多くの観客を感動させたのだと思います。

この作品を見て、最近は細田守をはじめとして、『パーフェクト・ブルー』などの今敏や『攻殻機動隊S.A.C.』の神山健治、あるいは『涼宮ハルヒの憂鬱』の山本寛も加えるべきかもしれませんが、そつがない演出を行う賢いアニメ演出家が増えているなと思いました。


時をかける少女 限定版 [DVD]

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