「Rockin'on」に見るロックリスナーの高齢化

近年の「ロッキング・オン」の表紙が、とても2000年代の雑誌とは思えないものばかりだったので、少し調べてみました。以下、「ロッキング・オン」誌の表紙を、以下のように分類し、その数を調べてみます。(バックナンバーリスト

  1. 90年代末〜00年代デビューのバンド・アーティスト
  2. 10年以上のキャリアを持つベテラン現役バンド・アーティスト
  3. 解散したバンド(再結成組含む)
  4. 複数(年間ベスト・ディスクガイド・ロックフェス)


2007年

2007年には、現役バンドが2回、ベテランが3回、解散が2回、複数が1回表紙になっています。これを見ると、2007年の「ロッキング・オン」の表紙は、90年代の表紙と25%しか変わらないことが分かります。


2006年

2006年の表紙は、現役バンド0回、ベテラン9回(?)、解散2回、複数1回でした。活きの良い新人バンドは、2006年に一度たりとも表紙になっておらず、「ロッキング・オン」は、90年代の表紙と入れ替えても全く問題がないという、驚異的に懐古的な雑誌になっていることが良く分かります。

欧米では相当に過去の人なはずのオアシスが2回も表紙になり、ニルヴァーナ特集のバックナンバーが2006年唯一のSOLD OUT になっていることを見ても、この年の「ロッキング・オン」の90年代ノットデッドさ加減は異常なものがあると思います。


2005年

  • 1月号:エミネム(1)
  • 2月号:オアシス「アルバム・オブ・ザ・イヤー2004」今年は総勢50枚!(2)
  • 3月号:「真実のクイーン、真実のフレディ・マーキュリー」(3)
  • 4月号:オアシス「2005年ロック大予測!」オアシス&ナイン・インチ・ネイルズ新作など50のトピックで05年のロック・シーンを総力大予測!(2)
  • 5月号:グリーン・デイ来襲!!(2)
  • 6月号:オアシス、新作を語る!(2)
  • 7月号:オアシス(?) 05年上半期・大物リリース・ラッシュ徹底検証!(2)
  • 8月号:レディオ・ヘッド「僕らの2000年代を振り返れ! 2000-2005ベスト・ディスク100!!」00年代の名盤を総力レヴュー! レディオヘッドストロークスプライマル・スクリーム他(2)
  • 9月号:「『LIVE8』徹底検証!!」U2(2)
  • 10月号:フランツ・フェルディナンド(1)
  • 11月号:ベック「アーティスト50人が選ぶ『究極の1枚』!」(2)
  • 12月号:ストロークス新作ついに到着!(1)

2005年は、現役3回、ベテラン8回(?)、解散1回、複数0回が表紙となりました。この年は、2006年よりはフレッシュな人が多く、全体の25%を締めましたが、正直エミネムは賞味期限切れギリギリという感じなので、全く新鮮味なく、実質的な新鮮さはさらに落ちるという感じです。とりたてて話題作を作ったわけでもないオアシスが、これほど表紙になるというのは、「ロッキング・オン」読者の90年代ノットデッドさ加減を如実に物語っていると言えるでしょう。

これ以上は、見てみませんが、00年代に入ってからは、大体ずっとこんな感じだったようです。


それにしても、打ち込んでいて悲しくなるほど、ほとんど全く新鮮なニューカマーが表紙になっていませんでした。2005年以降32号の表紙は、現役バンドが5回(15.6%)、ベテランが20回(62.5%)、解散バンドが5回(15.6%)、複数が2回(6.25%)でした。つまり、この10年にデビューしたバンドは、解散したバンドと同じ回数しか表紙を飾っていないと言うことになります。

それにしても、ColdplayMuseKeaneThe DarknessSystem of a DownEvanescenceMaroon5Linkin ParkWhite StripesPlaceboThe Killers等々、表紙を飾っても良さそうなロックバンドは、沢山いたと思うのですが。

圧倒的に多かったのはベテランですが、彼らの大半は90年代を代表するバンドやアーティストでした。特に、オアシスの表紙登場回数は、異常ともいうべき多さでした。これを見ると、現在の「ロッキング・オン」の読者の中心は、90年代にオルタナティブロックやブリットポップの洗礼を受けた、20代半ば以上の世代だと思われます。

これらの過去のバンドに魅了されて新たにロックリスナーになる若者は、以前と比べると遙かに少ないと推測されるので、新規に講読し始める読者は非常に少なく、読者の新陳代謝が余りなく、読者の年齢層上昇と共に、じわじわと部数を減らしているのではないかとも予想されます。

近年、確かにアメリカでは余りロックは盛り上がっていませんでしたが、イギリスではそれなりに動きがあったわけで、何故新しいバンドをハイプしないのかは気になるところです。おそらくは、新しいバンドを表紙にすると、売り上げ部数が減少するのでしょう。

ロッキング・オン」の表紙を見ると、日本では、本当に洋楽ロックリスナーが高齢化していることを実感させられます。