ビル・コンドン監督『Dreamgirls』

モータウンシュープリームスをモデルにした映画『ドリーム・ガールズ』を見ました。このように、この映画は、無名の黒人三人娘と彼女たちを売り出し、黒人によるレコード会社を作り大成功した裏方の男たちの話です。

基本的に物語やテーマははっきりしておらず、時代背景の描き方も中途半端なので、内容はかなり散漫だといえます。逆に言えば、ショービジネスの裏側も、成功物語も、成功するためのえげつないやり方も、ソウルの商業化も、黒人解放運動やベトナム戦争とニューソウルの勃興も、男と注目をめぐるメンバー間の愛憎劇も、ドラッグも、挫折と立ち直りも盛り込んだ、楽しみどころが多い内容だとも言えるでしょう。

この映画は、本来台詞で処理すべきところも、歌で説明するというミュージカルなのですが、「何でここで歌うの?」と不自然に思うような場面もあり、ミュージカル映画としては余り出来が良くないと思いました。ただ、基本的には、ソウルやモータウンサウンドが全編に渡り歌われているので、華やかで、楽しい雰囲気にはなっています。

主演のアメリカン・アイドル出身のジェニファー・ハドソンは、非常に声量のある歌を歌っており話題になったのも納得という感じでした。彼女が演じるキャラクターは、虚栄心が強く我が侭だったために仲間から見捨てられ、その後再起を図るというおいしい役でした。

ダイアナ・ロス役のビヨンセは、ジェニファー・ハドソンの噛ませ犬役という、見せ場の少ない、おいしくない役だったのですが、さすがに当代きってのスターだけあって、映画内のスターっぷりも堂に入ったものでした。また、一応「Listen」という曲で、思う存分歌の上手さをアピールする機会もあったので、全体としてはそこそこ良い役だったように思います。

また、根っからのエンターティナーのソウルシンガーを演じたエディ・マーフィ−の芸達者ぶりも際だっていました。彼が、売れるために押しつけられた甘ったるいバラードを歌うのを止めて、突然ズボンを下ろしファンキーな曲を歌い出すところは、この映画のハイライトだったと思います。

全体としては、芸達者が派手に歌い踊る場面を楽しむという、それ以上でもそれ以下でもない、エンターテイメント映画だったのではないかと覆います。


ドリームガールズ:デラックス・エディション(DVD付)

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