ニコニコ動画でセカンド・サマー・オブ・ラブ

ニコニコ動画著作権違反だらけの場所ですが、ニコニコで人気があるのは、ユーザーが勝手に加工して作ったいわゆるMAD と呼ばれる動画です。その意味では、ニコニコ動画は、コミケの動画版と言えるでしょう。元ネタいじりが進みすぎて、もはや原型をとどめない、つまりほとんどユーザーの創作に近いようなMAD も多く、むしろそういう動画の方が人気があるので、同人誌同様かなり創作的要素が強いとも言えます。

これは音楽で言えば、サンプリングを切り張りして作ったクラブミュージックやヒップホップに相当するものだろうと思います。動画制作のコストが下がり、ソフトが誰にでも使えるようになるまでにかなり時間がかかったので音楽から大分遅れましたが、10〜20年遅れてようやく動画でもサンプリング音楽と同じ様なことができるようになったために、みんなMAD を作りまくっているのでしょう。

ニコニコ動画のMAD はかなり凄いことになっており、日々多くの人々が自らの創作力を爆裂させています。今のニコニコ動画は、多分新しいジャンルがもの凄い勢いで成長する段階にあり、多分アイマスやドナルドやフタエノキワミや様々な自作アニメを見ることは、かつてのパンクムーブメントやセカンド・サマー・オブ・ラブに参加するようなものなのだろうと思います。桃井はるこが、セカンド・サマー・オブ・ラヴを引いて、萌えはロックだと言うのは、多分正しいのだろうと思います。

パンクやレイブというのは反社会的で、大人が眉をひそめ、危機感を感じるようなものだったわけですが、現在の日本で大人が眉をひそめるようなヤバイ音楽や音楽ムーブメントはありません。日本では音楽にはもう大人の眉をひそめさせるほどの力はありません。でも、萌えなどのオタク的な趣味は社会的に本気で蔑まれ、危険視されているわけです。社会的な立ち位置を考えるとやはり日本で最もロック的・パンク的な文化は、オタク文化になるのだろうと思います。若者の鬱屈が、反社会的だったり暴力的なかたちで吹き上がるイギリスと、非社会的で立ち去り型なかたちで吹き上がる日本を対比すると、日本の文化の息苦しさを感じますね。

音楽的にも今一番ヤバいのは、エロゲを発祥とする電波ソングだろうと思いますし、日本のサブカルチャーは完全にオタクに征圧されたのだと、ニコニコ動画の異様な盛り上がりを見ていると実感します。