「ぼかさち」に見る「ボーカロイド」曲の比率
「ぼかさち」に登録された楽曲のうち、「ボーカロイド」*1に関する歌詞がつけられた曲がどれくらいあるかを調べてみました。
月 「ボーカロイド」曲の比率 全登録曲数 「ボーカロイド」曲数
2007/09 10.6% 141 15
2007/10 11.2% 233 26
2007/11 9.5% 253 24
2007/12 9.1% 363 33
2008/01 10.6% 423 45
2008/02 4.6% 346 16
2008/03 8.8% 375 33
2008/04 9.1% 254 23
2008/05 9.0% 234 21
2008/06 6.4% 235 15
2008/07 8.5% 284 24
2008/08 8.6% 315 27
2008/09 9.6% 197 19
2008/10 4.0% 227 9
2008/11 6.9% 262 18
2008/12 7.1% 42 3
「ぼかさち」には、全てのVocaloid楽曲が登録されているわけではないので、参考程度の数字になりますが、この結果を見る限りでは、Vocaloidを使った楽曲に占める、Vocaloidの自己言及を歌詞にした楽曲の比率は、初音ミクが発売された当初から一貫して低く、10%程度だったことが分かります。
2007年10月を頂点に、「ボーカロイド」曲の比率はやや下がる傾向にありますが、これは単なる登録曲の片寄りによるものかもしれませんし、「ボーカロイド」曲の比率が確実に減っていると言えるほどはっきりとした結果だとまでは言い切れません。そのため、全Vocaloid曲に占めるVocaloidの自己言及を歌詞にした曲の比率は、元々非常に低かったし、次第に低下する傾向にはあるが、以前と比べて比率が激減したとは言えないと結論づけられると思います。
ここから、Vocaloidの自己言及を歌詞にした楽曲が、次第に目立たなくなったのは、作り手ではなく、視聴者の関心が変化したからである可能性が非常に高いと推測されます。つまり、初期には多様な楽曲の中で、Vocaloidの自己言及を歌詞にした曲に極度に視聴者の関心が集まっていたのが、視聴者が次第にそのような歌詞の曲に関心を示さなくなったため、曲自体は発表されているのに、余り注目を浴びず、相対的に普通の歌詞の曲が目立つようになったと言うことです。
果たして「メルト」以前と以降で、「ボーカロイド」楽曲のアクセス数が大きく変化したのかを調べてみれば、id:GiGirさんが「初音ミクという神話のおわり」で提示した仮説が、正しいかどうかを検証することができるだろうと思います。
*1:ボーカロイドが歌ったと思われる歌詞。ボーカロイドを連想させる歌詞。http://bokasachi.natsu.gs/about/guide/words/
OSTER project feat. 初音ミク 『みくのかんづめ』は、オリコンアルバムチャート21位
OSTER project feat. 初音ミク 『みくのかんづめ』は、オリコンアルバム週間チャートで21位でした。売り上げは、10043枚です。このアルバムは、最初こそデイリー8位に入ったものの、すぐに急降下し、現在はデイリーの30位に入っていません。
「みくのかんづめ」の売り上げ数は、livetune の『Re:package』の初週の売り上げ数2.0万枚の約半分であり、チャートの下落の速度も速いということで、『Re:package』と比べると、一部の固定ファン以外には余り売れていないことが推測できます。
OSTER project さんと言えば、最初期から初音ミクを使ったオリジナル曲をニコニコ動画で発表してきた、Vocaloidプロデューサーの代表格で、人気や知名度で言えば、ryoさんに次ぐ二番手と言って良いかと思います。ニコニコ内での人気や知名度を考えると、kzさんやかじゅきさんよりもかなり上だと思いますので、ニコニコ内での人気や知名度が、そのままCDの売り上げに反映されるわけではないことが分かります。
そして、『みくのかんづめ』や「桜の雨」の売り上げを見ると、どうもニコニコ動画内での人気や注目は、そのままパッケージの売り上げにつながるわけではなく、ニコニコ動画発の楽曲をその外側に流通させることは、かなり難しいことが分かります。『Re:package』が非常に成功したので、私はアマチュアミュージシャンがメジャーになる経路として、Vocaloidやニコニコ動画が活用できるのではないかと期待したのですが、どうも『Re:package』は例外だったようです。
Osterさんの人気や、「桜の雨」の周到な展開をもってしてこの数字なので、事実上現在のニコニコ動画発の楽曲の売り上げは、アルバム1万枚(累計は1万5000くらいでしょうか?)、シングル5000枚 (累計で8000枚くらいでしょうか?)が上限なのかと思いました。
同人で発売した場合には、これほどの枚数は売れないでしょうし、ニコニコ動画を見ない人に聴いてもらう機会を作るという意味では意味のある発売だと思いますが、おそらく単純にお金を儲けたいと思えば、同人で発売した方が良いのだろうと思います。
何故、『みくのかんづめ』は、『Re:package』よりもずっと少ない数しか売れなかったかを考えると、仮説は二つ立つかと思います。
一つ目は、両方とも、ほぼニコニコ動画の視聴者のみに売れた。Osterファンは、livetuneファンよりも、パッケージに魅力を感じなかったことです。
二つ目は、『みくのかんづめ』は、ニコニコ動画の視聴者にしか売れなかったが、『Re:package』は、ニコニコ動画の視聴者以外にも売れたことです。
私は、第二の仮説が成り立つ蓋然性が高いだろうと考えています。というのは、『みくのかんづめ』は発売直後に一気に売れ、その後売り上げが急降下するという、熱心なファン以外には余り購入者がいない売れ方をしたのに対し、『Re:package』が継続的に売り上げを伸ばすという、熱心なファン以外にも購入されている売れ方をしたからです。
何故『みくのかんづめ』が熱心なファン以外には売れず、『Re:package』はそれ以外の人たちにも売れたのかを考えると、『みくのかんづめ』は初音ミクというキャラクターのキャラクター性を強調したパッケージや、キャラソン的な歌詞の楽曲によって構成されるオタク向けのアルバムになっているのに対し、『Re:package』は初音ミクのキャラクター性の萌え要素を削ぎ落としたパッケージや中田ヤスタカ的なエレクトロポップが中心となったサウンドの楽曲によって構成される、必ずしもオタクのみをターゲットにしたのではないアルバムになっているからではないかと思います。
このように考えると、現在Vocaloidのプロデューサーで最も人気があるのが、kzさんと同様に、おそらくロッキングオン・ジャパン育ちで、90年代後半以降のサブカルロック好きであろうryoさんであることは、非常に示唆的であるようにも感じられます。
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Re:Package / livetune feat.初音ミク (ジャケットイラストレーター redjuice(supercell
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