Dragostea din tei

ドイツなどのヨーロッパも、アメリカのポップミュージックから強い影響を受けているのですが、同時に違う部分も多いです。それを感じさせるのが、現在ヨーロッパで大ヒットを飛ばしているDragostea din teiという曲です。

この曲は、元々O-ZONE というルーマニアの3人組の男性グループが歌っていたのですが、Haiducii というイタリアの女性歌手もカヴァーしています。この二つは現在同時に発売されているのですが、現在ドイツのシングルチャートでは1位と2位を独占しています(Musikmarkt)。フランスでも、O-ZONE が1位(IFOP)、オランダで7位(Planet)、イギリスで10位(BBC)、スペインで3位、スウェーデンでHaidusiiが4位(Sveriges Radio)、イタリアで15位(F.I.M.I.)などとにかくヨーロッパ中で大ヒットしまくっています。

http://www.ozonemusic.de/


このようにヒットしているこの曲ですが、私が最初に聴いたときは、これはタイの曲か?と思ったほど、恐ろしく安っぽい曲です。この曲の単調で安っぽい打ち込みのリズムを聴くと、それだけで肩の力がへなへな抜けてしまいそうです。ドイツのポップスにもたまに唖然とするような安っぽく、リアルタイムで作られたということを感じさせない曲があるのですが、この曲はそれをさらに上回る衝撃的な安っぽさでした。

しかし、にもかかわらず大ヒットしているのは、この曲が強烈に印象に残る曲だからです。サビで「ヌマヌマYeah ヌマヌマYeah ヌマヌマヌマYeah」(何て言っているのか分かりませんが、私にはこうとしか聞こえません)という単純なフレーズの繰り返しがあるのですが、この部分が強烈に耳に残るのです。単純なフレーズの繰り返しは、リスナーに強い印象を与えるための手法ですが、この曲では、この手法が大きな効果を発揮しています。そのためにすぐに曲を覚えてしまい、やがて中毒的に何度も聴きたくなってしまうわけです。


私はドイツ以外の音楽シーンは良く知りませんが、個人的な印象としてはヨーロッパは、安っぽいものを受け入れる土壌があるのだということを感じます。これについては、いずれちゃんと書いてみたい気もするのですが、普遍的なもの、つまり技術を重視するアメリカと、そうでもないヨーロッパという文化的な違いがあり、「Dragostea din tei」のような印象には残るが度を超して安っぽい音楽は、アメリカでは余り受け入れられないもののような気がします。アメリカのチャート状況をきちんと知らないので、はっきりとは言えませんが、アメリカには、チャートに現れる安っぽい音楽の質量が、ヨーロッパとは全く異なるのではないかと思います。

それは、アメリカがヨーロッパのポップカルチャー宗主国であり、ヨーロッパ諸国のポップミュージックが、基本的にはアメリカの後追いだからなのでしょうが、案外それだけではないような気もします。特に、ヨーロッパのアイドルを見ていると、そう思います。


というか、日本を含めたアジアの国も、ポップカルチャーの安っぽさという点では、アメリカよりもヨーロッパに近いんですよね。要するに、常に大衆文化の先頭に立っているアメリカが特殊ということなんですが。


ヨーロッパの大衆音楽の歴史などを紐解けば、アメリカとヨーロッパのポップミュージックの特性の違いなどが分かるのかもしれませんが、面倒なのでさすがに余り調べたいとは思いません。でも、クラシックではない、西洋音楽史っていうのは、日本語でないですかね。