フリートウッド・マックとディクシー・チックス

私は、以前は、死ぬまでに一度はライヴを見たいアーティストがいて、それはFleetwood Mac でした。フリートウッド・マックといえば、70年代に『噂』が記録的なヒットを飛ばした超大物アーティストですが、日本では全然人気がないため、来日しないだろうし、いつ空中分解するか分からない不安定なバンドなので、生で見ることは生涯ないのではと思っていました。

しかし、彼らは2003年に『Say You Will』というアルバムを発表し、ドイツにもツアーにやってきたので、その際に生のコンサートを見ることが出来ました。黄金期のメンバーのクリスティン・マクヴィーが掛けていたのは残念でしたが、それでも、年齢による衰えを感じさせない非常に充実したライヴで感激しました。

フリートウッド・マックは、ドイツで見れたのですが、私にはもう一つ死ぬまでに見たいアーティストが出来ました。それは、奇しくもフリートウッド・マック「Landslide」をカヴァーした、Dixie Chicks です。私は相変わらずディクシー・チックスのライヴDVD を良く見るのですが、見る度に「Wide Open Spaces」だけは、生で聴かないと死ねないなと思います。

ディクシー・チックスも、フリートウッド・マック同様、母国での大物さ加減と、日本での人気が著しく不釣り合いで、ライヴしても採算が合わないため、来日しそうにないアーティストだと思うのですが、果たしてどこかで見る機会はあるのでしょうか。できれば、アメリカ南部のスタジアムで見たいものですが。

さて、こっちに来てから『Divas Lasvegas』というCD を買いました。これは、セリーヌ・ディオンやシェール、シャキーラ、アナスタシア、ディクシー・チックスという超大物女性アーティストが一堂に集い行ったライヴを収録したものです。

この中で、ディクシー・チックスは、なんとスティーヴィー・ニックスと競演して「Landslide」を歌っているのです。アレンジは、完全にディクシー・チックスバージョンで、メインヴォーカルもチックスのナタリーが取り、スティーヴィー・ニックスはコーラスに徹しています。しかし、正直、スティーヴィー・ニックスが加わったことは、余り成功しておらず、チックスだけで演奏した方がずっと良かったと思います。

と言うのは、チックスの3人とスティーヴィー・ニックスの年齢や声質が、余りにも違うために、スティーヴィー・ニックスの声だけが浮いてしまうからです。さすがに彼女も年なので、若いディクシー・チックスの3人の伸びやかな声と比べると、年寄りの声に聞こえてしまいます。単独で聴く分には、年や衰えを感じさせないのですが、元々濁声ですし、若い歌い手との競演は、なかなか難しかったようです。

正直「Landslide」に関しては、フリートウッド・マックのオリジナルバージョンを、ディクシー・チックスのカヴァーバーションが超えていると思います。この曲は、もちろんフリートウッド・マックの代表曲でもあるのですが、もうディクシー・チックスの代表曲と言っても良いだろうと思います。

私も「Landslide」は本当に名曲だと思うので、いずれ遠くない未来に老齢で歌えなくなるであろうスティーヴィー・ニックスに代わり、ディクシー・チックスの3人には、この曲を歌い継いでほしいなと思います。