ジルバーモントのミュンスター凱旋ライヴ

今年は、なんでもミュンスター司教区が出来てから1200年経ったということで、記念の催しが沢山行われています。そして、今回の催しのハイライトとも言えるお祭りが、今週末にかけて行われました。

7月2日土曜の夜には、ドーム広場にステージが組まれ、「Die Nacht der Stars スターたちの夜」というライヴが行われました。このライヴには、Orange BlueLeslie Mandoki & The Soulmates 、そしてあのSilbermond ジルバーモントが登場しました。

さすがに重要な記念祭ということで、ミュンスター市も気合いを入れたようです。今回は、Orange Blue ジルバーモントなどの知名度の高い大物を連れてきました。

ちなみにジルバーモントは、ベルリンで行われたLive 8 とのダブルヘッダーでした。おそらく先にミュンスターが決まっていたのでしょうが、それでもLive 8 に出るという心意気と体力には脱帽です。

ライヴは8時から始まるということで、少し前にドーム広場に言ったのですが、何故かトップバッターのOrange Blue のライヴはすでに始まっていました。Orange Blue は、ソウルフルな甘いポップスを歌うAOR デュオです。

CD を聴く限りでは、ちょっと甘ったるすぎるかなと思っていたのですが、生バンドで聴くと、ソウルテイストが前に出る曲が多く、思っていたよりもずっと良かったです。演奏もなかなかソリッドだし、ヴォーカルの男性も気合いが入っており、熱のこもった歌を歌っていました。また、野外にもかかわらず、一つ一つの楽器の音が良く聞こえるような良い音が出ていました。

ただ、一つ残念だったのは、彼らがこのライヴで、激ファンキーなリズムとスウィートなメロディーが気持ち良い「But I Do」を演奏してくれなかったことです。もしかすると、私が来る前に演奏していたのかもしれませんが、いずれにせよ残念です。


二番手は、Leslie Mandoki & The Soulmates というバンドです。私はこれまで、このバンドのことを全然知りませんでした。すると、セットチェンジの後ステージに出てきたのは、80年代的ファッションや髪型に身を固めた中年たちで、これはヤバイと思わされました。私は、ミュンスターのお祭りのライヴで、80年代からの生き残りのようなバンドを色々見たのですが、どれも非常に酷いバンドでした。そのため、私には、ドイツの80年代的バンド=聴くにたえない、というイメージがありました。

しかし、彼らが演奏し初めてみると、これが全然悪くないです。音楽のセンスは確かに80年代的なんですが、どうもバックボーンにプログレやジャズ、フュージョンがあるようで、演奏はかなり凝っていました。このバンドの編成はかなり変わっていて、ツインヴォーカルに、二台のドラム、フルート、シンセサイザー、女性コーラス、ベースでした。(ギターはいたか忘れました)

このバンドは基本的にシンセポップバンドなんですが、ドイツの80年代バンドにありがちな、もっさりした単調なリズムに耳の覚えやすいシンセが乗るというようなことはやっていません。リズムもかなり凝っていますし、シンセサイザーのフレーズも、非常に面白いものでした。曲の展開が二転三転するプログレチックな曲もありましたし、フルートがポップスで多用されるというのも面白かったです。

私は、確かにセンスは古くさいバンドではあるけど、音楽的にはなかなか面白いと思って聴いていたのですが、正直周りの客は全然聴いてませんでした。

私はわりと前の方にいたのですが、前の方はほとんどジルバーモント目当ての聴衆に埋め尽くされており、彼らは当然の如く、全く音楽を聴く気がありませんでした。彼らのほとんどは、ローティーンの女の子で、その場に座り込んだり、友達と大声で話していたり、携帯で話していたりしており、マナーが悪いことこの上なかったです。正直、とても音楽を楽しんで聴くような雰囲気ではありませんでした。ラストの頃は大声で友達を呼んでいるグループも出現したほど、彼らは全く音楽を聴いていなかったです。ステージで演奏しているミュージシャンに対して失礼なことを行い続ける女の子集団に、私はかなり不快感を感じており、音楽を十分に楽しめなかったのは残念でした。

さて、Leslie Mandoki & The Soulmates の出番が終わると、前の方はますます混んできて、窮屈になってきました。前のバンドの出番が終わっても、ほとんど人が入れ替わらなかったので、前の方はほとんど場所取りの人だったことが分かります。

前にいる気合いの入ったファンの大半は、ローティーンの女の子でした。本当に、小中学生ぐらいの女の子ばかりで、男の子もポツポツいるだけでした。そのため、ジルバーモントの人気を支えているのは、主に10代前半から半ばくらいの女の子であり、ヴォーカルのStefanie は、男の子に異性として好かれるよりは、女の子に憧れられていることが分かりました。


私は昨年、同じドーム広場でジルバーモントのライヴを見ています。その頃は、ジルバーモントはまだようやく名が売れ始めた頃で、前座バンドとして、まだ少々閑散とした会場でライヴを行いました。その時は、お客さんも、ファンと言うよりは、たまたま見に来た人という感じでしたし、そんなに盛り上がっていませんでした。

しかし、それから一年が経ち、ジルバーモントは押しも押されもせぬ大人気バンドになり、ミュンスターに戻ってきました。その結果が、無料ライヴとはいえ、広大なドーム広場を埋め尽くす35000人の大観衆の大歓声です。短い間にずいぶんと大きくなったものだと思います。

ライヴが始まると、前の方はもの凄い盛り上がりになりました。彼女達はまだ若くて、エネルギーが有り余っているようで非常に元気でした。

ライヴそのものは、DVD に収められたツアーを、若干短くしたという感じで、相変わらず観客とのコミュニケーションが多いライヴでした。演奏の方は、音量のせいか、人の密度が多すぎるせいか分かりませんが、音が潰れ気味で、余りはっきり聞こえなかったので、どんな感じか今一つ分かりませんでした。

ちなみに「Zeit für Optimisten」のA メロ間奏のドラムパターンは、シングルバージョンでした。どうもDVD に収録したライヴの後に、ドラムパターンをもっとシンプルに変えたようです。

ライヴ自体は、大変盛りだくさんで楽しいものだったと思いますし、会場も、恐ろしく盛り上がっていたので大成功だったと思います。ただ、個人的には、やたら横から押してきたり、リュックサックを背負ったまま、あるいはハンドバックを持って、こちらにぶつかってくる女の子が周りにいて、非常に不快な思いをしたので、余り楽しめませんでした。やはり、ライヴ慣れしていない、自己中心的な子供に囲まれてライヴを見るよりは、お金を払っても、ちゃんとしたライヴで、まともな客と一緒に見た方が楽しいと思いました。

それでも、前の方には、狭い場所でたばこを吸ったり、酒を飲んだりしていた観客は余りいなかっただけマシなのかもしれません。ライヴが終わった後、ドーム広場には、大量のビール瓶がそのまま放置され、ゴミだらけになっていました。また、ドイツ人の若者は、何故かビール瓶を割るのが大好きなので、あちこちでビール瓶が割れており、ガラスの破片が散らばっていました。

アンコールのアコースティックバージョン「Symphonie」「So wie jetzt wird's nie wieder」などは、本当に良かったので、周りに邪魔され心から楽しめなかったのは残念でした。そのため、彼らが、早めに2枚目のアルバムを出して、またツアーに来てくれることを心から祈っています。