Wir Sind Helden. MTV Campus Invasion

今日MTV で、MTV Cumpas Invasion という番組がやっていました。何でも、大学のキャンパスにステージを設置しライヴをやるというイベントのようで、今回はヘッセンGießen ギーセンという街で行われました。ちなみにこのギーセンは、Juli ユーリの出身地として有名ですが、今回はユーリは登場しません。

今回演奏したバンドは、KasabianPatriceAdam Green、そしてWir Sind Helden ウィア・ズィント・ヘルデンです。メンバーからしてちょっとしたロックフェスティバルという豪華さなので、野外ステージの前には、おそらく軽く一万は越すだろうと言う大勢の観客が集まっていました。

私はアダム・グリーンの出番から見たのですが、彼が、コミカルな動きで、客を楽しませる3枚目風の人だとは知りませんでした。音の方も、なんとも昔懐かしいポップスという感じで、気軽に、楽しく聴ける感じでした。


今回のヘッドライナーは当然ながらWir Sind Helden でした。彼らは、そろそろ日も沈み始めて、陽の光がオレンジ味を帯びた午後9時頃登場し、次第に日が暮れていき、ステージが漆黒の闇に包まれる2時間ほどの間演奏していました。

私はこれまで、映像を含め、Wir Sind Helden のライヴをちゃんと見たことがありませんでした。彼らは元々ヘタウマ的なサウンドで登場したので、私はずっと、演奏の方はそんなに上手くないのではないかと思っていました。

しかし、今回のライヴを見てみると、全然そんなことはありませんでした。 演奏の方も、思いの外しっかりしています。思いっきりヘタウマ演奏なVirginia Jetzt! ヴァージニア・イェツトMia ミアSportfreunde Stiller シュポルトフロインデ・シュティラーなどと比べると、Wir SInd Helden は、格段に高い演奏力を持っていたようです。

また、フロントマンのJudith Horofernes ユーディト・ホロフェルネスのカリスマ性も際だっていました。彼女は、かなり美人である一方、衣装にせよ、髪型にせよ、かなり優等生的なので、ステージ上でも地味なのかと思っていたら、案外サービス心があるようで、アクションやアピールもわりとやっていました。歌も特別上手いわけではなく、プロフェッショナルなエンターテイナーでもないのですが、不思議と華があります。

面白かったのが、彼女が客席にダイブする前に、ステージ上でスカートがめくれないように、ガムテープを張り始めたことです。その間他の三人が演奏して間を持たせるのですが、ステージ上で綺麗な女性が、ガムテープを歯でかみ切って、シックな黒のスカートにベタベタ貼っている様は、なんともシュールでした。というか、ダイブするつもりなら、ジーンズをはいてくれば良いのにと思わないではありませんが、彼女はそれでもスカートがはきたかったのでしょう。

ちなみに、ライヴでは、観客も最初から最後まで、ダイブしまくりで、もの凄い盛り上がりでした。でも、静かな曲でも、次々にダイブするのは、ちょっとやり過ぎだろうと思いました。

ライヴでは、セカンドアルバムの曲はかなりオリジナルに忠実に演奏していましたが、ファーストアルバム曲は、ライヴオリジナルのアレンジに変わっていました。特に、激しいパンクサウンドに生まれ変わった「Aurerie」は、原曲のかわいらしい雰囲気とのギャップが大きく、面白かったです。

とにかく、優れた楽曲を、確かな演奏力で、センスの良いアレンジをして、時に盛り上げ、時に聞かせ、サービス心たっぷりに披露するのだから、良いライヴにならないわけはありません。野外で、大観衆の前で演奏するのも堂に入ったもので、バンドとしてのスケールの大きさを見せつけていました。Wir Sind Helden は、現在ドイツで最も人気があるバンドと言っても過言ではありませんが、それも納得の、充実したライヴでした。

ドイツ最高のバンドとこれまでずっと言われてきたのは、80年代からドイツポップス界の最前線で活躍し続けている化け物パンクバンドDie Ärtzte ディー・エルツテでした。そのため、新世代バンドの代表格であるWir SInd Helden を評するとき、Die Ärtzte と比較されることがちょくちょくあります。

私にはその判定はできませんが、面白いと思うのは、このどちらのバンドも、基本的に余り大物然としていない、知的で、すっとぼけた、一筋縄ではいかないバンドだと言うことです。ドイツというと、謹厳実直なイメージがありますが、ドイツで一番人気があるバンドはどちらも非常に遊び心あふれたバンドであり、全然謹厳実直ではないと言うのは面白いと思います。国際的に有名なドイツバンドであるラムシュタインも、かなりすっとぼけたバンドですし、ドイツの大物バンドは、すっとぼけたバンドが多いような気がします。

いずれにせよ、我らがヘルデンたちは、ライヴでも思う存分バンドとしての実力を発揮しており、やはりドイツのリスナーの圧倒的な支持を集めるだけのことはあると思いました。