森美術館「アフリカ・リミックス」

六本木ヒルズの展望界にある森美術館の「アフリカ・リミックス」を見てきました。この展覧会は、アフリカの現代美術を紹介するもので、世界中で巡回しているようです。

アフリカは、植民地化などでヨーロッパに対して、複雑な姿勢を取らざるを得ないと言うところがあるのでしょう、美術作品でも、自国の伝統や文化、政治的状況などをテーマにした作品が結構多かった気がします。中には、伝統的なアフリカ美術のような作品を作るアーティストもいましたが、彼らも西洋の美術の方法論を学んできたのでしょうから、彼らにとっては伝統は既に自明のものでなく、再帰的なものだと言えるでしょう。

全体的に感じたことは、現在では、美現代美術家が作る美術作品では、アフリカならではの特質がそれほど表れるわけではなく、別にヨーロッパの現代美術も、アジアの現代美術も、アフリカの現代美術も、アメリカの現代美術も、それほど変わるわけではないのだろうと思いました。アフリカもまた、現代美術において(そもそもファインアート自体が西欧近代ローカルなものなので当然ですが)、植民地化され、高踏的な部分では伝統は失われたのだろうと感じました。

この展覧会で一番インパクトがあったのは、白い部屋に三台のプロジェクターを据え、二台が父母、一台が父母を見ている娘を映し出しているというビデオの展示です。父母は、アルジェリアの戦争で女性がフランス兵やアラブの民兵に強姦された話や、フランスへの脱出の話などをしていました。娘は無言でそれを聞いています。父と母は、同時に話しているので、見ている者は彼らの話をきちんと聞いて、理解することが難しくなっています。しかし、この忙しなさが、観衆に異化作用を及ぼし、単なるドキュメンタリーの語りではない、奇妙な感じを与えていました。