束芋展「ヨロヨロン」(原美術館)

品川の原美術館束芋展に行ってきました。原美術館は、奥まった路地にある現代美術館です。非常に目立たないところにあるのですが、お客さんは沢山来訪していました。やはり、マイナー文化の存在には、大きな市場が必要であることを実感します。

束芋さんは、白黒、あるいは彩色された手書きの動画をコンピューターに取り込み、さらにテクスチャーを貼ったりして、アニメーションを作ってる人です。今回の展覧会では、あちこちで飛び降り自殺が起こっている中、中年の婦人が料理を作っている作品や、適当に書いた落書きを動かしている作品や、波や突如浮かび上がる内臓的な空間の中を、女性の髪の毛が泳ぎ回る作品や、ヤクザの背中の刺青の花が次第に散っていき、最後にはヤクザの身体まで崩れていく作品や、汚いトイレの中、ランドセルを背負ったパンツ一枚の女の子が手を洗ったり、女性が堕胎した子供と共に亀を便所で流したり、女性が便器に飛び込んだりするアニメーションを見ることができました。

これらのアニメーションは、三台のプロジェクターによって映写されたり、床に映写されるなど、インスタレーション的に上映されていました。

内容については、さっぱりわかりませんでしたが、昆虫と融合した手や、浮世絵的なキッチュな色彩や、内臓的な空間を泳ぎ回る髪の毛など、面白いイメージは色々とありました。ただ、一枚絵を書き込む芸術的アニメーションには良くあることですが、動き自体は非常に退屈なので、アニメーションとしては面白くありませんでした。

一枚絵を書き込んだため、動画枚数を増やせなくなり、さらにおそらくは作者に動画を描く技術がなかったために、作品の動きは、非常に記号的で、官能性に欠けていました。黒い海に無数の波が沸き立つところや、髪の毛が水の中でゆらめく描写などは、きちんと動けば、見事な効果を上げるだろうと感じられただけに、勿体ないと思いました。動きがつまらないというのは、アニメーションとしては致命的なので、この方は、資質としてイラストレーターの方が向いているのだろうと思いました。元々のイメージは面白いので、本職のアニメーターが動画を描いて、2コマぐらいで動かせば、見違えるように面白くなると思います。ただその場合、余計にお金が掛かりますので、なかなか難しいのだろうと思いました。