細田守『劇場版 ワンピース オマツリ男爵と秘密の島』

ONE PIECE ワンピース THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島 [DVD]

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時をかける少女』で一躍名を上げた細田守の映画を観てみました。この作品は、人気漫画『One Piece』の劇場版アニメです。物語は、オマツリ男爵が、リゾートを餌にして、自分の支配するオマツリ島に海賊を呼び込み、地獄の試練を与え、仲間をバラバラにしていくというものです。

前半は、ドタバタしたゲームが繰り広げられ、コミカルな雰囲気になっていますが、後半は雰囲気が全く変わってしまいます。画面は、黒を基調としたコントラストの強い暗いものになり、なおかつBGM はほとんどなくなるか、不協和音が鳴っているという殺伐とした雰囲気になります。また、仲間が奪われていく喪失感とその喪失感からの回復が中心的なテーマになっているので、物語的にも非常に暗いものになっています。

この作品は、キャラクターの造形を崩したり、描線を鋭角的にしたり、影をつけなかったり、キャラクター同士のやりとりをトゲトゲさせたりするなど、サブカルアニメ的なデザインや演出を行っており、原作とは全くかけ離れた雰囲気を持つ作品になっています。

映像はCG を多用して、縦の動きなどを表現したり、ハッタリの効いた動きやレイアウト、編集で、トゲトゲした感じを出すなど、それなりに工夫され、良くできていると思いました。

全体的には全く原作の雰囲気とはかけ離れた、細田守監督の個性が滲み出ている作品だと思います。何故こんな作品になったかというと、細田監督が、『ハウルの動く城』を降板させられたときに受けた心の傷のせいだということです。(「アニメスタイル」のインタビュー

基本的には、原作の雰囲気を無視してやりたい放題やるという『うる星やつら ビューティフル・ドリーマー』のような作品だと思います。この作品は、『ワンピース』を楽しみにしてきた子供たちを心底ガッカリさせ、トラウマを残したのではないかと思います。