アクセスアアーツフォーラム 障害のある人の芸術文化活動を通した社会参加

宮城県美術館の講堂で行われた「アクセスアーツフォーラム 障害のある人の芸術文化活動を通した社会参加」というシンポジウムを聞いてきました。講堂には、かなりの人数が来ており、特に若者が多かったです。福祉系の大学の学生でしょうか。

先ずこのシンポジウムを主催した財団法人たんぽぽの家の理事長の播磨靖夫氏が趣旨説明を行いました。この「たんぽぽの家」は、エイブルアート活動の中心になっている団体です。播磨さんは、個人が分断され、マイノリティーが社会的に排除されている現代で、アートを通じて障害者などのマイノリティーを社会的に包摂する、アートを通じて健常者と障害者の互酬を促進することが目的であるそうです。

最初の事例研究は、たんぽぽの家アートセンターNANA プログラムディレクターの柴崎由美子さんと、所属アーティストの山野将志さんによって発表されました。山野さんは、オーストラリアに招かれ、向こうの障害者と共に作品制作を行ったそうです。また、山野さんがアーティストとしての自己意識を持っていること、彼の作品や行動が周りに影響を与えていることが強調されていました。

次の事例研究は、NPO アートプラネッツみやぎ代表の小島まことさんによって発表されました。小林さんたちは、仙台の知的障害者入所厚生施設の中に、障害者が美術作品を制作できる場所である「アトリエ・ぽてとはうす」を作ったそうです。これまで障害者がアートなんてできるはずはないと思われていたのに対し、小林さんたちは、そんなことはないと考えたそうです。しかし、一般のアトリエでは障害者は受け入れてもらえず、宮城でも「ぽてとはうす」しかアートの制作を行える場所はないそうです。このアトリエでは、障害がない人もいっしょに制作が出来るので、健常者と障害者のコミュニケーションの場になっているそうです。

次は、「ミューズの夢」副理事の島崎詠子さんによる事例研究が発表されました。「ミューズの夢」では、障害のある子供たちに、音楽教育を行っているそうです。その際に、ただ楽しいだけではなく、きちんと音楽の能力を身に付けさせているそうです。また、障害者と健常者が合同でミュージカル公演を行っているそうです。

最後に、「みやぎダンス」理事の定行俊彰さんの事例研究が発表されました。定行さんは、障害者がアートに触れる際に二つの壁が存在すると説明していました。一つ目は、情報へのアクセス手段の欠如、受け入れ先の不足、移動、受講費などアートの創作活動に参加する際の壁です。二つ目は、アーティストとして身を立てる際の壁です。定行さんは、質の高い舞台を作ることで、障害者にも、ダンスという芸術で自己表現することが可能だということを示しているそうです。

その後パネル・ディスカッションがありました。その際印象的だったのは、定行さんが言う第一の壁、つまりアートにはなかなか触れられないと言う壁は、障害者だけでなく、健常者にとっても同じだという私的です。宮城県美術館学芸員の齋正弘さんは、これはテクニックやスキルをアートと同一視させる学校の図工教育の失敗のせいだと言っていました。アートで重要なのは、スキルやテクニックではなく、「表現の質」なのに、学校でそれを教えないのが悪いと言っていました。


このシンポジウムで強調されていたのは、障害者を社会的に包摂する手段としてアートが有効なのではないかという福祉的な視点と共に、障害者が自己表現し、アートに携わることには意味があるという、自己実現、さらに芸術的な視点です。障害者は何もできない存在であると見なされ、ただ授産施設などに適応し、自分を殺して生きるように養護学校などで教育されるそうです。そのため、社会から排除され、健常者の見えないところに囲い込まれている障害者を、アートを通じて、健常者とコミュニーションさせ、彼らを特別視する心を変化させ、彼らを社会の中に包摂することと同時に、障害者がアート作品を作ることで自分を自由に表現することも重要視されていたのだと思います。


と、忘れないように自分でメモ書きをしてみたのですが、他のブログでも色々言及されているようです。