秋山弘志、北谷 賢司 『エンタテインメント・ビジネス 』

秋山弘志、北谷 賢司 『エンタテインメント・ビジネス 』(新潮社、1999年) は、株式会社東京ドームで東京ドームで大物アーティストのコンサート招致などに携わった著者たちが、興行ビジネスの裏側について書いた本です。

この本では、興行招致の交渉の過程や、収支の詳細についても詳しく説明されています。驚いたのは、東京ドームクラスのコンサートでは、極めて細かい部分まで契約書で合意してから契約が締結されるために、分厚い契約書ができるということです。下手すると、アーティストの飲み物を何にするかまで契約書に記載されることあるそうで、恐ろしい手間が掛かるそうです。

また、個人的に面白いと思ったのは、複数公演が行われた場合に、リピーターの数を算出する方法です。同じ商品を何度も買うファンは稀なので、公演を重ねるたびにマーチャンダイジングの売り上げが急激に下がっていくようで、この売り上げの下がり方からリピーター数が算出できるそうです。

また、以前はダーティーな部分も多く、どんぶり勘定だった興行ビジネスも、大資本が進出してきており、水商売的な要素が減ってきているそうです。東京ドームも上場企業なので、かつての呼び屋のようなことはできず、日本の興行のビジネス化に貢献していると、著者たちは述べていました。

また、外国人弁護士を使う方法についても書かれていました。

  1. 現地法人のスタッフ、溶くに現地採用の役員や社員の推す弁護士を、背後関係も調査せずに無条件で雇うな
  2. 本社の上役が親しいとか、会社が長くお世話になっているからなどの理由で、専門領域の異なる弁護士を雇うな
  3. 学歴、専門知識、経験、そして所属事務所の業界内での影響力を確認してから雇え
  4. 日本的な交渉プロセスに順応性がある、興行の際に独走しないという性格を確認してから雇え
  5. 契約規模に比例する手数料や成功報酬を要求する弁護士は避け、高くても時間単価ベースの報酬だけを請求する弁護士を雇え
  6. 日本語が堪能な弁護しに惑わされるな


しかし、単独興行でこれだと、多くの大物アーティストを招致するロックフェスの交渉コストは、とんでもないことになっていそうですね。おそらくかなり条件の詰めなどは簡略化されているのでしょうが、どうしているのでしょうか。やはり、大金が関わるところでは、利益を求めようとする人々が群がり、交渉コストが上がるのだということが良く分かります。


エンタテインメント・ビジネス

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