Henry Selick監督「The Nightmare Before Christmas」

ティム・バートン原案・脚本の長編アニメーション『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』を観ました。この映画は、CG と人形アニメーションを組み合わせて作られています。アニメーションは極めて滑らかで、画面中のガジェットも無数にあるということで、恐ろしい手間暇をかけて作られた作品なのだろうと思います。

物語は、人を脅かすことしか考えていない化け物たちが住むハロウィンタウンで最も人を脅かすのが上手いジャックが、自分の仕事にうんざりしているところから始まります。彼は、偶然明るく楽しいクリスマスの国に紛れ込んだため、自分たちも楽しい雰囲気の祭りをしようとクリスマスの準備をし始めます。

しかし、楽しいことをしようとしてもジャックを含め、ハロウィンタウンの住民はみんな、人を怖がらすことしか知らないので、一生懸命真似をしようとしても結局全てグロくなっていまいます。そして、サンタの代わりに子どもたちにプレゼントを贈ったところ、子どもたちはプレゼントに怖れ戦き、ジャックは狼藉者として追いかけられ、結局大砲で撃ち落とされてしまいます。

結局ジャックは、自分に明るく楽しい祭りは合っていないことを理解し、また人を怖がらせるモチベーションを取り戻し、この映画は終わります。

このようにこの映画は、陰鬱な世界に生きているものが、明るい世界で生きようとするが、結局無理があるので、また元の陰鬱な世界に戻るという話です。これは、世間の日陰者や嫌われ者が、社会の主流派になりたいと一生懸命がんばるが、結局無理があるので日陰者として生きることを決心するということだろうと思います。つまり、日陰者には日陰者なりの幸せがあるのであり、社会の勝ち組・主流派になりたいと無理をしても仕方がないという映画になっているだろうと思います。

それにしても、ハロウィンタウンの国の住民が自分たちの美意識に従って一生懸命作ったプレゼントが、普通の人間の子どもやその親に、極めて質の悪い悪戯だと受け取られる場面は、『最強伝説黒沢』のアジフライの話を思い起こさせる切ない場面だなと思いました。

作品の雰囲気はホラー調ですが、キャラクターはどれもかわいらしく、ハロウィンタウンの住民も外見は化け物で、グロい趣味をしていても、大半は悪い奴ではないので、観ていて微笑ましく、かわいらしいコメディーになっています。社会の日陰者、嫌われ者に対する愛情が感じられる作品になっていると思います。


ナイトメアー・ビフォア・クリスマス コレクターズ・エディション [DVD]

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