ロバート・ゼメキス監督『ベオウルフ』

『ベオウルフ』を観てきました。この映画は、実在の俳優をモチーフにしたフルCGアニメです。現在の技術水準がどの程度のものかを計るベンチマークとして面白そうだと思ったので劇場で観てみました。

舞台は8世紀のデンマーク、ある王国に現れた怪物を英雄ベオウルフが倒すという話です。物語は基本的にアンジェリーナ・ジョリー=怪物の母親の美貌と富や名誉・王位に目がくらんだ男たちが、自分の過ちの結果たる怪物に自分の国を荒らされるという反復を描いています。自分の過ちを自分で償おうと怪物を倒したベオウルフが過ちの連鎖を断ち切ったと思いきや、まだ終わっていなかったという『リング』みたいな話です。

しかし、この映画で物語云々をどうこう言うのは野暮なものでしょう。基本的にこの映画は、CG を使ってどこまで実写に肉薄できるかに挑んだベンチマーク映画だからです。

個人的な印象としては、風景や自然物、建物に関しては既に十分実写の代替ができるし、一番難しい人間に関してもあと一歩のところまで来ていると思いました。既に他の映画でもファンタジー映画やSF映画ではCGと実写はほとんど融合しており、実写とアニメの境界は余りなくなっていると言えます。人間に関しても、まだCGっぽさを感じるところもありましたが、ほとんど実写と見紛うようなところもありました。モブシーンやスタントシーンなら既にCGで全く問題はないし、それほど遠くない未来にCGキャラクターが不気味の谷を越え、主演が実写でも本物の俳優と見分けがつかないレベルに達するだろうと思いました。

ただ、CG に演技させる手間を考えれば人間の俳優に演技させた方が手間も時間もコストも省けると思うので、CG で人間を再現することにそれほどメリットがあるとも思いませんでした。生身の人間には難しかったり、不可能だったりするような場合に補助的に使うのでしょうか。

映画として面白いかどうかは別として、ベンチマーク映画としては良い映画だと思いました。