若杉公徳『デトロイト・メタル・シティー4』
『DMC』最新刊の4巻を読みました。前の巻からサタニック・エンペラー・フェスティバルでのトーナメントバトルが繰り広げられており、本巻でサタニック・エンペラー編が完結しました。少年漫画のトーナメントはその漫画のクライマックスを意味しているので、どこまでテンションを上げてくれるのか楽しみにしていましたが、さすが『DMC』、予想を超える盛り上がりっぷりでした。
クライマックスはジャック・イル・ダークを血祭りに上げたノルウェーのデスメタルバンドヘルヴェタとの戦いなのですが、この戦いは、ヨハネ・クラウザー2世こと根岸宗一のネガとの戦いとなりました。
この作品は、主人公は本当は渋谷系ポップスをやりたいのに全く認められず、本人が嫌々やっているデスメタルでは大人気というギャップで笑わせる作品ですが、クラウザーは主人公にとって単に演じているだけの存在ではなく、抑圧した欲望を吐き出すための手段でもあります。見た目はなよなよしていても、彼は鬱屈しているものを抱えており、ブチ切れたときには誰よりも恐ろしいというのが根岸宗一=クラウザーさんです。
今回の敵は、主人公の自分が認められていないという思いをこれ以上ないほど刺激する相手なので、主人公の鬱屈は頂点まで高まり、最後の最後で大爆発します。シリアス漫画の盛り上げパターンで行くと思わせ、それを毎回外しギャグにしつつ、にもかかわらずテンションを次第に高める手腕が見事です。クライマックスの炎の中でギターをかき鳴らすクラウザーさんはまさしく魔王で、若杉公徳はよくぞここまで作品を高めたなと思いました。『DMC』は名作として残ると思います。
作品としては、多分この巻のテンションがピークだと思いますが、今後もメディアミックス展開が色々あるので、まだまだ楽しませてもらえそうです。
- 作者: 若杉公徳
- 出版社/メーカー: 白泉社
- 発売日: 2007/11/29
- メディア: コミック
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