アラバキロックフェスティバル2008 二日目

アラバキの二日目です。この日は概ね晴れで、気温も前日ほど低くなかったので過ごしやすかったです。

最初に見たのは、ゲートをくぐったときに聞こえてきた良い感じの音に釣られたNICO Touches the Walls です。このバンドは、メロディアスでありながら、ガレージパンクに通じる硬質で音圧の高い演奏をしており、なおかつ変拍子などのポストロック的要素も採り入れているバンドです。メロディーも良くて、曲のセンスが良く、バンドアンサンブルも良く、アレンジも凝っており、爆音で盛り上がれるし踊れるけど、ポップスとしても聴けるだけのキャッチーさがあるということで、全てにおいて高水準なバンドだと思いました。

色々なバンドを見て思うのは、基本的に若い世代のバンドの方が演奏が上手く、曲にしろアレンジにしろ技巧を凝らしているのではないかということです。90年代を通じて、日本のロック好きの若者のリズムやメロディーに関する感覚が大きく変わり、それが若いバンドにも反映されているのだと思います。若い世代のバンドは、様々な技巧もさりげなく使い、ちゃんとポップスとして聴けるように昇華しているので、本当にバンドのレベルが高くなっていると思います。NICO Touches the Walls も、変拍子だらけの曲でも、違和感なく聴けるように仕上げており、技術を見事に使いこなしているなと思いました。

お昼前でかなり暖かく、青空も見えたので、聴いていて非常に気持ちが良かったです。


NICO が予想外に良かったので最後まで見てしまい、終わった後はすぐにtoe が演奏するハタハタステージに赴きました。途中津軽ステージのGanga Zumba の良い感じの音が聞こえてきたので、そちらに流れそうになりましたが、泣く泣く諦めました。

toe は、インストポストロックバンドで、非常に技巧的な演奏をしていました。ポストロック特有のエレキギターの音や、アコギの音を生でも再現していました。ギターは基本的にアルペジオなので、一音一音の粒が立っていました。BPM がある程度早い曲ばかりだったので、インストでも聴きやすかったです。

あと、toe も前に見たte と同様に、ドラムが正面奥ではなく、ステージ左側で横を向いて設置されていました。これはポストロックバンドのお約束なのかと不思議に思いました。


次は、ハナガサステージのPerfect Piano Lesson を見ました。このステージは今年から出来た新しいステージで、白い小さなプレハブ小屋のような感じでした。そのため、演奏の音が少しこもり気味でした。

Perfect Piano Lesson は3ピースのポストロック色の強いロックバンドです。リズムは変拍子ばかりですし、非常に技巧的なのですが、ドラムの手数が非常に多く、打ち込みも強いので、かなり爆音度の高い演奏になっていました。


その次は、芝生の上に座ってビーフストロガノフ500円を食べながら、のんびりとKAN を見ました。KANはロックフェスには場違いの黒いフォーマルな装いで、やたらと丁寧にお辞儀をする仕草が客に大受けしていました。この日は、ピアノ弾き語りで、ゆっくりしたバラードばかりを歌っていました。本人が述べるように、ゆったりとゆるい感じだったのですが、飾り気のない曲や歌詞、歌が素直に心に響き、グッと来ました。ベテランのさすがの実力でした。


その次は、Acidman を少し見ました。お客さんが一杯で大人気のようでした。演奏は凝っているけど、曲自体はわりとベタと言うところが魅力なのだろうかと思いました。ヴォーカルの人が「もっと盛り上がろうぜ!」と客に呼びかけた後、余り盛り上がる感じでもない曲を演奏していたのが面白かったです。


その次はゆらゆら帝国を見ました。ベースの人が前髪パッツンに艶々ストレートの長髪で、美輪明宏に通じる妖怪然とした佇まいをしていたのが印象的でした。しかし見た目だけでなく、演奏も凄かったです。ベースが演奏を引っ張り、ドラムとギターリフと絡み合って、凄いグルーブ感を出していました。思わずサイケデリックロックやブルースロックの古典を勉強したくなってしまうくらいでした。ゆらゆら帝国のライヴは凄いという噂は聞いていましたが、噂に違わぬ圧巻のステージでした。


ゆらゆら帝国が終わると、すぐにDouble Famous に向かいました。演奏は始まっていましたが、まだヴォーカルの畠山美由紀が出てきていなかったので良かったです。演奏は、ハワイアンあり、インドあり、サンバありと多国籍でした。どの曲も踊れるアレンジで、ステージ上で沢山の人が演奏し、踊っていることもあり、非常に賑やかで楽しかったです。

私は、畠山さんの歌を生で聴くのは初めてだったのですが、曲毎に歌い方を変え、完璧に演奏にあった歌を歌うなど、さすがの上手さでした。しかし、無茶苦茶上手いのに、全くこれ見よがしではなく、演奏を最大限に引き立てて歌っていました。また、畠山さんは宮城県出身なので、気仙沼大使の畠山ですと何度も繰り返していました。

大編成による賑やかでスケール感のある演奏は、開放感のある野外と良く合っていました。また、時間が5時頃になり、太陽の光が次第に弱くなってきて、非常に透明感があったので、空も青いし、ステージ上のメンバーも聴衆も、楽しく笑顔で踊りまくっているし、最高に気持ち良いなと思いました。


Double Famous と次の原田知世は同じ津軽ステージでした。このステージはすぐ隣が湖なので、しばらく湖の畔の柵に腰掛けて休んでいました。持ってきたベーグルを囓りながら、遠くのステージ前に次第に人が集まっていく様や、次第に弱まっていく太陽の光や、まだ緑の葉が揃っていない木々や湖の水面をぼんやり眺めながら、遠くの方から聞こえてくるオリジナルラブの演奏を聴いている時が、もしかすると今回のフェスで一番楽しい時間だったかも知れません。


個人的に今回のフェスの最大の目玉だった原田知世ですが、今年のアラバキが初めての野外フェスだったそうです。彼女は緑色のワンピースを着て登場したのですが、登場した瞬間、いたるところから「かわいい」という声が上がるほどのかわいさでした。何を喋っても、どんな仕草をしても、立っているだけでも無茶苦茶かわいいので、そのかわいさはほとんど人間離れしていました。

彼女が歌ったのは、全てニューアルバムの曲でした。一番聴きたかったキセル作の「くちなしの丘」も歌ってくれました。バックバンドはキーボード、バイオリン、ウッドベース、ドラム、「くちなしの丘」だけギターが加わるという編成でした。演奏はアルバムのあの感じを見事に再現していました。

原田知世の歌は上手くはないのですが、曲の良さを邪魔せず、なおかつ声の存在感がるということで、アイドル歌唱としては理想的だったように思います。演奏も、歌も、本人の佇まいも、全てにおいて隙がなく、極上の質を保っており、これこそが完璧なアイドルポップスなのだと思いました。


原田知世のライヴが終わると、すぐにアラハバキステージに向井、イースタン・ユースを見ました。ライヴを一言で言うと、「みwなwぎwっwてwきwたwぜw」という感じです。演奏は、地の底から沸き上がってくるよう力強さに満ちていて、聴いていてグッと来ました。個人的には、今日のベストアクトでした。


その次は、再び津軽ステージでHeatwave を見ました。昨年見て非常に良かったので、今年も見たのですが、正直お客さんはかなり少なかったです。しかし、演奏は相変わらずの素晴らしさで、センスは良いし、凝っているし、非常に格好良かったです。でも、演奏はかなり凝っていて洗練されていて、ポップセンスにあふれているのに、曲や歌詞、歌い方がフォークっぽいので、そのギャップが面白いです。

アンコールもやってくれたし、非常に楽しく、満ち足りた気分になったので、結局Sherbets を見るのは止めて、そのまま帰りました。Heatwave がトリとしては一番最初に終わったので、バスにも待たずに乗れて良かったです。


今日は、天気も良く、昨日ほどは寒くなかったので、心ゆくまでフェスを堪能できました。やはり、空が青いことは、野外フェスでは非常に重要だと感じました。

終わりよければ全て良しと良く言いますが、今日のDouble Famous原田知世イースタン・ユースHeatwaveはどれも最高だったので、最高に良い気分でフェスを終えることが出来ました。音楽はやはり楽しいものだと思わされた、今年のアラバキロックフェスティバルでした。