凄い映画を尊重する

賛否両論が分かれているこの夏最大の大ヒット作『崖の上のポニョ』ですが、個人的には大変素晴らしい映画だと感じました。通常の映画の文法をことごとく無視して作られた映画ではありますし、エンターテイメント映画としてもどうかと思いますが、そんなことは全くどうでも良く思える凄い映画だと思うからです。

良くできた映画、面白い映画は沢山ありますが、凄い映画というのは、非常に希少だと思います。そのため、『崖の上のポニョ』は、大変貴重な作品だと思います。かつての宮崎駿映画の凄さが、エンターテイメント映画として余りにも出来が良いという方向での凄さだったとしたら、『もののけ姫』以降の作品の凄さは、もっと剥き出しの、何だか分からない物語や表現による凄さに大きく変質しています。面白いのは、映画としての文法を無視し始めた後に、宮崎駿の映画の興行収入が桁違いに上がったことです。これは、現象としてはかなり奇妙ですので、どこかできちんとした分析が成されるべきであろうと思います。

いずれにせよ、『崖の上のポニョ』は、正しく『もののけ姫』以降の宮崎作品であり、凄い映画でした。