livetune feat. 初音ミク『Re:package』が、オリコン週間5位に

livetune の『Re:package』が、オリコンの週間ランキング5位に入りました。売り上げは2万枚とそれほど多くはないので、基本的にはネット上で盛り上がった一部のマニアの買い支えでランクインしたと考えられますが、今はメジャーのアーティストでもなかなか2万枚売れないので、十分立派な売り上げだと言えるでしょう。

 動画投稿サイトなどで話題を呼んでいる“VOCALOID2”という音声合成技術を採用したソフトの代表格『初音ミク』を大々的にフィーチャリングしたlivetune feat.初音ミクのアルバム『Re:Package』が発売1週目で2.0万枚を売上げ、9/8付週間アルバムランキングの5位に初登場した。

ORICON STYLE


(参考)「livetune feat.初音ミクがオリコン週間5位、ニコニコ関連初のトップ10入り」(The Natsu Style)


このアルバムのランクインをポップス史的に見た場合二つの特色があると言えると思います。一つ目は、合成音声ソフトがメインヴォーカルを取ったアルバムが、チャート上位にランクインしたことです。これは、日本のみならず世界のポップス史上初でしょうから、今後ポップミュージックにおいて合成音声ソフトの使用について語られる場合、必ず初音ミクとこのアルバムのことが言及されることになります。

今後合成音声ソフトの使用がどれくらい広がるかは分からないので、その影響度やポップス史的な重要度は不明ですが、いずれにせよこのアルバムは、ポップス史上の古典と位置づけられるアルバムになるだろうと思います。

もう一つは、このアルバムは、日本のポップス史上において、インターネット発でアマチュアミュージシャンが発掘され、大ヒットを飛ばしたほぼはじめての例ではないかということです。この辺りは、私は十分調べていないので、他に何かあるのかも知れませんが、「Muzie」や「Audioleaf」あるいは「Nextmusic」などのインディーズ視聴サイトでアマチュアミュージシャンが注目を集め、大ヒットを飛ばしたという話は、私は聴いたことがありません。

おそらく、日本でのネット発のヒットと言った場合、You Tubeニコニコ動画で草の根的にファンを増やし、大ブレイクを果たしたPerfume が一番の好例になるでしょう。ただし、Perfume もネットだけでなく、テレビのCMやラジオでの木村カエラ発言などマスメディアで採り上げられてブレイクしたので、ネットはその下地を作ったに過ぎないだろうと思います。

欧米では、無名のミュージシャンが、My SpaceYou Tube で莫大なアクセス数を稼ぎ、メジャーデビューして大ヒットを飛ばすという例が既に珍しくありません。その中にはメジャーレーベルの仕込みもあったとして、My SpaceYou Tube が音楽シーンに与える影響は、もはや疑いえないだろうと思います。

他方、日本ではレコード会社がネットでの音楽配信に極度に抑制的であるため、あるいは携帯という音楽試聴には向かない携帯でインターネットを行うユーザーが多数を占めているために、ネットでアマチュアミュージシャンが注目され、大ヒットを飛ばすということがほとんど起こりませんでした。

おそらく、日本で海外におけるMy Space 的なものが存在するとすれば、それはニコニコ動画のヴォーカロイド関連動画と言うことになるだろうと思います。日本のインターネットサイトで、アマチュアミュージシャンの楽曲が大きな注目を集め、巨大アクセス数を稼ぐのは、ここしかないだろうと思います。MuzieYou Tube で公開されているアマチュアミュージシャンの楽曲のアクセス数は、ヴォーカロイド関連の人気動画と比べると、著しく少ないのではないかと思います。その意味では、他のどのサイトからでもなく、ニコニコ動画発でMy Space 的な大ヒットが生まれたのは、必然だったと言えるでしょう。

ただ、問題は、ニコニコ動画あるいは初音ミク関連の楽曲は、あくまでオタク文化圏、あるいは市場という特殊な文化圏、あるいは市場でのみ盛り上がっているものだということです。今回の『Re:package』の売り上げのかなりの部分は、Amazon 経由だったようですし、ネット上の一部では盛り上がっているが、おそらくその外側ではそれほど盛り上がっているわけではないでしょう。売り上げも2万枚程度なので、一部の好事家が買っただけだとも言えるわけです。

この『Re:package』は、同人音楽市場から生まれたわけですが、この間書いたように同人音楽市場は、それ以外の音楽市場とは隔離された、極めて特殊な市場です。これは、同人音楽が属するオタク文化圏、あるいは市場が、かなり高度な自立性を持つ特殊な文化圏、あるいは市場であるからです。ニコニコ動画も、基本的にはこのオタク文化圏に属するものなので、ヴォーカロイド関連の楽曲も、基本的にこの文化圏や市場でのみ流通することになります。

これは、日本のアマチュアミュージシャンが活動する際に、かなり大きな問題になります。ニコニコ動画くらいしかアマチュアミュージシャンが注目を集めることが出来る場所がネット上にないのに、ニコニコ動画は、オタク文化とは無縁のアマチュアミュージシャンを受け入れる土壌がありませんし、ニコニコ動画で注目されたとしても、通常の音楽市場に戻ることが難しい、つまりオタク文化圏という閉鎖的な文化圏に活動の場や音楽流通が限定される可能性が高いだろうからです。

つまり、日本の音楽市場は、欧米と比べると、かなりアマチュアミュージシャンにとって厳しい環境下にあるのではないかと思います。携帯によるインターネット利用で、アマチュアミュージシャンが注目されるような仕組みが作れれば良いのでしょうが。

その意味で、livetune の今回の成功は、日本のアマチュアミュージシャンのインターネット利用の可能性とその限界を示したものだとも言えるのではないでしょうか。

その意味では、livetuneが、今回のチャートへのランクインを足がかりにして、Perfume のようにより広い音楽市場で活躍できるようになるかどうかは、日本のアマチュアミュージシャンにとって、大きな意味を持つのかも知れません。