テクノポップのチャート最高位比較

livetuneの『Re:package』はオリコン週間5位で、2万枚を売り上げました。プロモーション、またアマゾンでの売り上げ比率の高さから、おそらくこの売り上げのかなりの部分をニコニコ動画の視聴者が占めていると思われます。このことは、オタク市場がいかに大きく、ユーザー数が多いかを示していると思います。

これがどれほど凄いかは、livetune と音楽的に近いテクノポップ、あるいはフューチャーポップ関連のアルバム売り上げを見てみれば分かります。

先ず、中田ヤスタカCapsule ですが、2007年のアルバム『Sugaeless Girl』の最高位が25位、『Flash Back』の最高位が20位です。


中田ヤスタカプロデュースのMegの2007年のアルバム『BEAM』の最高位が24位、2008年のアルバム『Step』の最高位は8位です。


2008年発売の中田ヤスタカ参加の鈴木亜美のアルバム『Dolce』は、最高位26位です。


Aira Mitsuki の今日発売のアルバム『Copy』は、デイリーチャートの30位圏外です。2008年3月発売のシングル「チャイナ・ディスコティカ」の最高位は103位、5月発売のシングル「Darling Wondering Staring/STAR FRUITS SURF RIDER」の最高位は114位です。


You Tubeで30万アクセスを売りにしていたニコニコ動画でも違った意味でおなじみの元気ロケッツの2008年『元気ロケッツ I -Heavenly Star-』の最高順位は15位です。


My Space で注目されたSweet Vacation の2007年のアルバム『More the Vacation!!』の最高順位は158位、2008年のメジャーデビューシングル「I miss you-ep-」の最高順位は66位です。


Perfume に対抗し本場エレクトロを導入した80_pan の2008年のアルバム『Disco Baby』の最高順位は233位です。


日本が世界に誇るチップチューンの雄YMCKのメジャーデビューアルバム『Family Genesis』は最高位56位です。


日本のお洒落クラブミュージックの代表格i-dep の2007年のアルバム『Fine Tuning』は最高位56位です。


ここから推測できるのは、音楽ジャンルとしてのテクノポップやフューチャーポップを好んで消費するユーザー数は、極めて少ないということです。ジャンルを代表するアーティストであるCapsulei-depのアルバム売り上げがこの程度なので、コアなファンは日本中で多くてせいぜい数万人程度なのではないでしょうか。私はこの辺の事情には詳しくないので単なる推測になりますが、このジャンルにいるアマチュアミュージシャンは、インディーズレーベルからアルバムを出したとして、大半は数百枚程度しか売ることができないのではないでしょうか。

上で挙げたアーティストはどれも、メジャーのレコード会社に所属し、少なからずプロモーション費用を投じて売り出しているアーティストたちです。当然、メディアでの露出や、曲が掛かる頻度も、全く無名のアマチュアと比べれば比較にならないほど多いということになります。

にもかかわらず、現実には、ニコニコ動画で大人気を博した曲の方が、オリコンでの順位が上で、おそらく売り上げも良かったという現実があるわけです。つまり、既存のメディアに薄く広く広告を出す、あるいは音楽ファン向けの媒体で集中的に宣伝を行うよりも、ニコニコ動画でランキング1位になる方が、下手すると売り上げにつながるという状況が、既に出来つつあると言うことです。

今回『Re:package』は初週売り上げ2万枚でしたが、kzさんよりもニコニコ動画で人気がある「メルト」などのryoさんがメジャーデビューすれば、さらに上位に食い込む可能性はかなり高いだろうと思います。

これは、かなり凄いことで、オタク市場の外でロックやポップスをやっているミュージシャンには全く望めない恩恵です。たとえば、現在の若手ロックバンドでは最も注目を浴びているバンドの一つである9mm Parabellum Bulletのメジャーデビューアルバム『Discommunication e.p.』が初登場9位、売り上げ9000枚、ミドリのメジャーデビューアルバム『あらためまして、はじめまして、ミドリです。』が最高位25位です。

livetuneの成功は今のところ例外的に大きいので誰でもというわけにはいかないでしょうが、オタク市場の巨大さが、いかに市場に属するアマチュアミュージシャンに大きな利益を提供する可能性を持っているかを伺うことが出来るのではないかと思います。


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あらためまして、はじめまして、ミドリです。

あらためまして、はじめまして、ミドリです。