ドイツ音楽市場2003年(2)

一人当たりの購入額

2003年の一人当たりのオーディオレコードの購入額は、19.89ユーロです。90年代半ばから2000年までの一人当たりの購入額は、30ユーロ前後で安定していたのですが、全体の売り上げ同様、2001年から下落し始め、2003年にはついに20ユーロを下回るところまで下落しました。


CDの価

ドイツのCDの平均価格は、10年前と比べてわずかに上がっただけで(5.6%)、インフレ率を考慮に入れると、10.6%下がったことになるそうです。比較のために他のメディアの価格も載っているのですが、演劇のチケットが41.2%、映画のチケットが27.9%、ラジオ、テレビの料金が34.8%、本が24.4%、新聞が50.7%上がったそうです。

この価格の推移を見ると、CDの価格は他のメディアと比べ下がっているが、それでも売り上げ数は上がらなかったことが分かります。ドイツのCD価格の水準は、西ヨーロッパでも最低の水準にあるようですし、ドイツに関して言えば、CDの価格と売り上げの関係は、価格が下がれば、売り上げ枚数が増えるという単純なものではないようです。


月毎の売り上げの推移

2003年度の月毎のオーディオレコードの売り上げの推移は、例年とほぼ同じだったようです。ドイツの売り上げのパターンは、5月から8月の夏が売り上げの底で、夏が終わると突然売り上げが上がり9月から12月までが売り上げのピークであるようです。

ドイツの音楽の売り上げで特徴的なのは、売り上げのピークが11月であり、クリスマスを含むため全体的な消費のピークになる12月の売り上げが大幅に下がり、9月の水準まで下がってしまうことです。理由は分かりませんが、どうも、クリスマス商戦では、CDは余り売れないようです。


全体の売り上げに占める各音楽ジャンルの割合

Pop(ポップス): 40,0%
Rock(ロック): 15,2%
Schlager(ドイツ版演歌): 8,6%
Klassik(クラシック): 7,1%
Kinderprodukte(子供向け製品): 7,0%
Dance(ダンス): 6,9%
Hörbücher(リスニングブック): 2,7%
Soundtrack/Filmmusil(サントラ): 2.4%
Jazz(ジャズ): 2,0%
Volksmusik(民族音楽): 2,0%
Country/Folk(カントリー、フォーク): 1,8%
Weinachtsproduktion(クリスマス用音楽): 1,3%
Instrumentalmusik(インストゥルメンタル): 0,7%
Sonstigeその他: 2,3%

ドイツの音楽市場では、40%という圧倒的に大きなシェアをポップスが握っています。また、ポップスと互いに明確に区別をしにくいロックダンスを合わせた広義のポップミュージックのシェアは、62.1%になります。

過去五年の数値と比べると、ポップスはピークの98年と比べると5.7%、前年比3.6%減少傾向、ロックはほぼ横這い、ダンスは、ピークの2000年と比べると1.8%と減少傾向にあります(ただし、前年比では0.7%微増)。


ポップミュージックに次ぐ8.6%のシェアを占めているSchlager シュラーガーは、比較的高齢な人々が好んで聞く音楽で、日本で言えば演歌のようなものです。はっきりしたメロディー、単調なリズム、80年代的な生々しさのない、人工的なサウンドがその音楽的な特徴です。

私はSchlager についての知識がほとんどないので断言できませんが、おそらく日本の演歌と同様に、英米のポップスやロックが入ってくる前の、ドイツの民族音楽の特徴を引き継いでいるのではないかと思います。しかし、高齢者の間では支配的であっても、音楽市場の中で占める割合は、それほど高くはありません。

しかし、最低のシェアだった99年と比べると2.4%、2003年は前年比で1.4%増加しており、増加傾向にあります。これは、他のジャンルの売り上げが減少する中、相対的に売り上げ減が目立たなかったと言うことであると思います。


あとは、クラシックと子供向け製品がほぼ同じシェアになっています。子供向け製品は、1998年の4.1%から5年で3%もシェアが上がっています。逆にクラシックは、5年で2.5%もシェアを落としています。

あとは、シェアは非常にわずかですが、ジャズのシェアは5年前の1.1%から2003年には2%まで上がっています。ノラ・ジョーンズ効果でしょうか。