大学版画交流展 6th JUNCTION

昨日は、図書館に行くついでに、せんだいメディアテークで「6th JUNCTION」という展覧会を見てきました。この展覧会は、東北の6つの大学岩手大学山形大学宮城教育大学東北生活文化大学東北芸術工科大学秋田公立美術工芸短期大学の学生による版画の合同展です。

入場無料ということで、たまたま見てみたのですが、予想以上に面白い展覧会だったので驚きました。全体的に具象的な作品は少なく、デザイン的だったり、抽象的、あるいは具象と抽象が入り交じったような作品が多かった印象がありました。東北芸術工科大の上河原桂さんの「パンク」という作品は、層状になった石が画面一杯に埋め尽くされているような、うねうねとした線によってフォルムが形作られたミニマルな作品でした。同じく工科大の佐藤賀奈子さんの諸作品は、細胞をイメージしたらしく、版画らしい細く神経質な感じの細かな描線の集積によって形作られた生物的な印象を受ける作品でした。

本田卓子さんは、シルクスクリーンによって、カラフルなグラデーションで彩られた下地の上に、無数の細かな泡のような穴が開いた文様を重ねた作品を出品していました。また、宮教大の増子博子さんは、大きな目玉状の二重の円に木の根のような黒いものがくっついている抽象的な作品を出品していました。しかし、細部を見ると、非常に細かで複雑な文様が書き込まれており、全体としてはやはり生物的な印象を受けました。

他方、佐藤那美さんの作品は、紺色を使った、素朴な感じの猫の版画でした。また、飛渡佐織さんは、「きのうのできごと」という絵本を出展していました。この絵本は、各ページが単色の背景と単色の版画という二色で構成されているという非常に色の鮮やかな絵本です。絵柄もキャラクター的で、シンプルでかわいらしいものです。しかし、内容は、子供たちが世界を見限って眠り込み、二度とは目を覚まさなかったという、世界に対する嫌悪感と悪意が根底に流れているものでした。

そして、やはり東北芸術工科大学の川合彩さんは、動物と植物とも文様ともつかない無数の繊細な描線によって画面を埋め尽くすという、非常に描線の流れの美しい作品を出展していました。この方は、ご自分の作品の解説で、「妄想が形になればいいなと思っています。」と、大変素敵なコメントを書いていました。また、コメントに書かれていたボールペン画がこれまた凄かったです。

個人的にはお金を出して見るような展覧会よりも、よほど新鮮で、刺激的で、面白い作品が揃っていたと思いました。今の若い世代の美術家には、面白い人が沢山いることが良く分かりました。