増子博子展[bonsai]

この間の「大学版画交流展 6th JUNCTION」でも作品を発表していた増子博子さんの個展が、re:bridge というギャラリーで開催されていたので、見てきました。このギャラリーは、せんだいメディアテークのすぐ近くにあります。このギャラリーは非常に狭く、6畳間くらいのスペースしかありませんでした。そのため、展示してあった版画も、確か6点ほどしかありませんでした。

今回の展覧会では、「bonsai」とタイトルが付けられているとおり、盆栽のような植物が描かれた版画ばかりが展示されていました。版画は、かなり大きめのキャンバスに刷られていました。画面構成はどの絵もシンプルで、盆栽らしき植物が描かれ、それ以外は背景も何もありません。そのため、盆栽のシルエットが非常に目立っています。盆栽は、すべて黒の細い線のみで描かれています。

しかし、これらの版画の特徴は、その緻密極まりない細密描写です。盆栽は、幾つかの記号的なパーツによって構成されています。葉を表す放射状の線、木の表皮を表す細かな線、他にもうねうねとした線や、蛇の体表のような線などが、盆栽の表面を埋め尽くしていました。非常に細かい線で、一部の隙もなく大きな盆栽の表面を埋め尽くすのは、途方もない手間がかかったに違いがありません。大変な労作だと思いました。これらの版画ではグラデーションも一切使っておらず、黒い線だけで描かれているので、これらの線の鋭さが際だち、無数の線がうねり、絡み合う気持ちよさを味わうことができました。

以前見た版画と比べると、今回の版画は、コンセプトもはっきりしており、画面の構成もシンプルで印象に残るものですし、描写も細部まで手抜きがなく、さらに具象としての面白さと線そのものが暴れる楽しさのバランスが上手く取れていたと思います。ただし、その分、見ていて何だか分からないという要素は背景に退いてしまい、行儀が良くなったという印象も受けました。いずれにせよ、大変面白い作品ばかりでした。