24時間アニメ『フウムーン』

昔、24時間テレビ内で放映された手塚治虫製作のスペシャルアニメシリーズの一つ『フウムーン』を見ました。『フウムーン』の原作は、手塚治虫の名作『来るべき世界』ですが、このアニメは名作とは遠くかけ離れたトホホな出来になっています。

物語は、次のようなものです。地球環境が汚染され、東西両大国がいがみ合う中、ある島に突然変異で生まれた新人類フウムーンが現れます。彼らは、全世界の動物を集め、宇宙船で地球を捨てて、逃げようとしています。というのは、遠い宇宙で爆発した超新星から生まれた暗黒ガスが、地球に近づいており、もうすぐ地球が滅びるからです。それを知った、一部の良心的科学者が、暗黒ガスから地球を守るバリアーを作りますが、バリアーを打ち上げる宇宙船が、暴徒によって破壊されてしまいます。

しかし、人間に助けられたために人間を救おうとしているフウムーンののロココは、自分の宇宙船にバリアーを載せて、宇宙に飛び立ちます。しかし、作戦は失敗し、地球は暗黒ガスに覆われたと思いきや、ロココの涙が奇跡を生み、宇宙船が再び動き出し、宇宙船の反重力エネルギーで暗黒ガスを吹き飛ばします。ロココは死にましたが、人類は生き残り、一件落着で話は終わります。

あらすじを読むだけで、だいたい察しはつくと思いますが、この作品の演出やストーリーは、ご都合主義の固まりでできており、リアリティーは全くありません。また、登場人物がみな非常に頭が悪く、まともな思考力があったり、損得勘定ができる人間は一人も出てきません。

科学者なのに、見知らぬ生命体を一目見ただけで、突然変異で発生した新人類だと判断したり、政治家なのに会議の席上で腹を立て、個人的な怒りで戦争を始めたり、優秀な経営者なのに新人類を見て考えつくことが、見世物にして金儲けをしようというスケールの小さなアイデアだったりと、ほとんど全編ツッコミどころになっています。

一応人間の愚かさを訴えるということで、自然破壊や、全面戦争や、その他諸々が描かれるのですが、それらが物語やテーマ的に暗黒ガス到来とほとんどリンクしていませんし、最後まで問題は何も解決されていません。手塚治虫ともあろう人が、こんなデタラメな話を作るとはいったいどういうことでしょうか。

アニメーションに関しても、正直仕上げがかなり粗く、フィルムに汚れがついているなどの初歩的なミスが多すぎます。全体的に、余り見るべきものがない作品だと思いました。

フウムーン [DVD]

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