萌える趣都秋葉原

私は、まだ電気街だった頃の秋葉原しか知らないので、大きく変貌しオタクの街になったという秋葉原に行って来ました。秋葉原駅を降りると、出口付近の広告がほとんど萌えキャラクターの絵が描いてあるものだったので、最初から唖然とさせられました。駅周辺は再開発され、巨大なビルが建ち並んでいました。また、やたらとオタク関係の店が増えていたことにも驚きました。昔はパーツショップや電気店だった店舗が、フィギュア専門店になっていたり、同人誌専門店になったりしていました。

個人的に一番驚いたのは、同人誌専門店の「とらのあな」が、大通り沿いに高いビル丸ごと二つを店舗にしていたことです。同人誌という著作権的には危険なかおりがするアンダーグラウンドな商品を扱い、良くもここまで売り上げを伸ばしたものだと唖然としました。一応中に入ってみたのですが、成人同人誌が売っていた4階は、通路を人が埋め尽くすほどの混雑でした。レジ前には、数十人が並び、普通の本屋ではおよそ見ることができない混雑ぶりでした。コミケの直後だったので、特別混んでいただけで、普段はこれほど混雑はしないのかもしれませんが、同人誌のもの凄い人気を目の当たりにした思いでした。

また、街のあちこちに、噂のおでん缶やラーメン缶が売られている特殊な自販機が置いてありました。中には、モニターが付いており、ラーメン缶をアピールしている自販機もあり、このような設備投資が割に合うほどの売り上げを上げるのだろうかと不思議に思いました。また、どこかの店の入り口のワゴンに、萌えキャラがパッケージの「おでんカレー」という訳の分からない食べ物も売っていました。

駅前のラジオ会館は、現在フィギュアの店が沢山入っていますが、夥しい数の、ありとあらゆるジャンルのフィギュアがあったので圧倒されました。ダースベーダーが日本の鎧武者みたいになったフィギュアもありました。

また、一体10万円、着せ替え衣装が本物と同じぐらいするスーパー・ドルフィーという高価な人形も売っていました。衣装などのオプションがやはり夥しい数あり、この人形シリーズにはまった場合、数十万円単位の資金を投入することになるのだろうと思いました。また、人形を取りに来ることを何故か「お迎えに上がる」と表現していたのが、面白かったです。また、購入者の人形が飾ってあるガラスケースや、購入者が撮った自分の人形の写真などもあり、他の人に自分の人形を自慢したい人が多くいるようでした。

また、ドンキホーテの前に、大勢の人が並んでいたので、何かと思ったのですが、AKB48のイベント待ちの人たちでした。AKB48 といえば、CD発売初週だけはイベントなどで売り上げを伸ばし、オリコントップ10に入ることもあるが、固定ファン以外はほとんど誰もCD を買わないので、二週目に一気に順位を下げることで名高いグループですが、やはり熱心なファンが多いようです。

今回の秋葉原訪問の最大の目的は、メイド喫茶です。メイド喫茶が盛んになったのは、大分前のことだと思いますが、やはり後学のために一度見ておきたいと思いました。私が行ったのは、@home cafe の本店です。有名な店らしいですが、開店してすぐに店内は満員になるなど、大変人気があるようです。客層は、少数の常連らしき人を除けば、ほとんどは観光客らしき人たちでした。カップルや家族連れも多く、メイド喫茶は、すっかり観光スポットになったのだと思いました。

店の内装は壁や天井を白く塗っただけの、非常にいいかげんなものでした。天井にはパイプが剥き出しになっているところもあり、部屋の壁には安っぽいアルミサッシの引き戸がそのまま残り、ガラスの部分に目張りをしてあるだけでした。こんなに儲かってそうなのだから、せめて普通の喫茶店程度の内装にすれば良いのにと思いましたが、内装による店内の雰囲気作りはこの業種では重要ではないのでしょう。

料金は席料が500円に、注文した飲み物や食べ物の金額が加算されます。そのため、全体的には、普通の喫茶店よりも、大分高めになっています。ただし、メイド喫茶では、大量のアルバイトの女の子が必要なので*1、通常の喫茶店と比べると、数倍の人件費がかかるはずなので、この値段になるのは仕方がないだろうと思いました。

メイドさんたちは、渋い緑色と白のメイド服を着ていましたが、メイド服というよりは、コスプレ衣装のようでした。やはり、訓練されているのか、声の出し方が声優的で、普通よりも少し高い声で話していました。また、メイドさんたちのほとんどは、茶髪だったので、何故これほど皆茶髪なのだろうかと思いました。中には、メイドさんというより、ギャルっぽくも見える人もいました。

店内は狭いのですが、にもかかわらずメイドさんの数が多いので、絶えずメイドさんが店内をうろうろして、高い声で話しているので、内装の生々しさは残るにせよ、店内は大変な非日常空間になっていました。

メイドさんは、飲み物を給仕するときに、客が飲む前に、指でハートマークを作り、もっとおいしくなるように愛を注入しますというようなオノマトペを伴う定型句を言って、ハートマークを飲み物の上に持って行くという動作を行っていました。一応これは萌えを表したものだということは理解ができるのですが、萌え文化にドップリ浸かっていないと、その真価を理解することがなかなかに難しいと思いました。

時間がなかったので、短時間しかいなかったのですが、メイド喫茶というのは、大変な非日常空間であり、現実でファンタジーを楽しみたい人には、非常に魅力的なものなのだろうと思いました。

秋葉原は、街の到るところに萌えキャラの書かれた看板がかかっていたり、普段余り見かけないいかにもオタクという見かけの人や、コスプレをした人、ロリータ服を着た人など、変わった見かけをしている人も多いですし、余り日常で目にする機会がないものが街中に溢れているので、街全体がファンタジーという感じの街でした。この街にいる限り、オタクであることが当然であり、非オタクはお客さんでしかないという、外の世界とは反転した街だと感じました。いわば、毎日街全体でラブパレードをやっているようなものでしょうか。この浮かれ加減は凄いです。

*1:この店では、確か給仕役のメイドさんだけで6人くらいはいたと思います。この規模の喫茶店だったら、普通給仕役のアルバイトは1〜2名だと思いますし、メイドさんの方がかなり時給が高いであろうこと、アルバイトに支給するメイド服が高価だろうことなどを加味すると、メイド喫茶は固定費が大きいのだろうと思いました。