『グラストンベリー』2006年

今日は、チネ・ラヴィータで『グラストンベリー』というBBC 制作の音楽ドキュメンタリー映画を観てきました。この映画は、イギリスの片田舎で開かれる世界最大のロックフェスティバルであるグラストンベリー・フェスティバルを扱っています。

今日は観客もかなり入っており、日本におけるブリティッシュロック人気を感じました。しかし、観客の年齢層は結構高く、半分くらいは30〜40代のようでした。やはり、ロックファンは高齢化しつつあるのでしょうか。

グラストンベリー・フェスティバルは、元々農民のマイケル・イーヴィスが、1970年にウッドストックに影響を受けて、自分の農地で野外フェスを開催したのが始まりだそうです。彼はメソジストの家系に生まれ、ヒッピー的な考えを持っていたそうです。初期のグラストンベリーは、ヒッピーが集まるイベントだったようです。

その後、1980年頃に、サッチャー政権によるイギリス政治の保守化で抑圧された反政府的な人々や、失業などで住むところを失ったトラヴェラーズたち、サッチャーに敵意を抱く人々がグラストンベリーに集まり、フェスの規模が巨大化していったそうです。

また、この時期ストーンヘンジフェスティバルというフリーのロックフェスがあったそうですが、トラヴェラーズと警察が揉め、警察によるトラヴェラーズの暴力的な逮捕により、多くのトラヴェラーズがグラストンベリーに逃げてきたようです。

その後もトラヴェラーズは、グラストンベリー・フェスティバルに参加し続けたようですが、1990年に暴動が起きたため、イーヴィスはトラヴェラーズをフェスから排除し、フェスのセキュリティーを整備していったそうです。そのため、フェスの会場をフェンスで囲み、ヤバイ連中が入り込めないようにしたそうです。

フェスの会場は広大で、無数のテントが立ち並び、多くの人々が思い思いにフェスを楽しむようです。奇抜な格好をしたり、奇妙なパフォーマンスをしたり、素っ裸になったりする人も多いようです。また、会場には奇妙なオブジェがあちこちにあるようです。面白かったのは、気球のような丸い玉にぶら下がった女性が、空中でくるくると回っているパフォーマンスです。非常に危なくて、大変そうなパフォーマンスだと思いますが、ギャラは良いのだろうかと気になりました。

会場ではトイレが足りないようで、立ちションをする人も多いようです。また、雨が降ると会場全体がぬかるみになるようです。

グラストンベリーは現在でも昔ながらのヒッピー的な要素を残しているようで、ネイティブアメリカンを尊び自給自足的な生活を送る老人や、ヨガをやっている人々、反政府や反資本主義を叫ぶ人々、また本当の自分をフェスで取り戻そうという自分探し的な人々などが登場していました。こういった昔ながらの左翼的な要素は日本では00年代にほとんどなくなってしまったので、何となく懐かしい気分になりました。

映画の構成は、フェスを真似たのかかなりカオスでした。全体を貫くストーリーやテーマはなく、構成もほとんどないに等しかったです。現在のグラストンベリーの様子と、過去のグラストンベリーの様子が入り交じっているので、画面上の映像がいつの時代のものなのか分からないこともしばしばでした。また、ショットの切り替えがかなり早く、場面も頻繁に切り替わるので、雑多な状況が雑多なまま提示されているという感じでした。

そのため、ドキュメンタリーとしては非常に分かり難くいと言えますが、これは理解するよりも感じろという作り手のメッセージなのだと思うことにしておきます。

演奏場面も飛び飛びでそれなりに出てきますが、基本はフェスの運営や観客の様子を扱った映画だと言えます。雑多で散漫な内容のわりには、2時間20分とかなり長いのはどうかと思いましたが、ロックフェスやイギリスの反体制派の文化に関心がある人は見ても損はないだろうと思います。


参考

POSSE member's blog


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