「24時間アイマスTV!〜みんなまとめてアイドルマスター〜」大団円

昨日の18時から24時間にわたって放映されてきた、「24時間アイマスTV!〜みんなまとめてアイドルマスター〜」が、先程大団円を迎えました。

この企画は、24時間にわたってアイマス動画をニコニコ動画で放映するという企画なのですが、もちろんリアルタイムで放送しているわけではありません。時間を30分単位で区切り、時間が来たら予めアップしていた動画の未公開設定を公開に変えることで、擬似リアルタイムな視聴を可能にしています。もちろん、一度公開された動画はその後も見ることができるので、普通のニコニコ動画のように擬似同時的な視聴になるのですが、公開時間を設定することで、視聴者がより同時に、つまり他の視聴者といっしょに動画を楽しんでいると感じられるようになっています。そのためこの企画の視聴者の間には、まるでライヴを見ているときのような一体感が生まれ、より盛り上がって動画を楽しめるようになっていると思います。

全部はとても見ることができませんが、私も、なるべくリアルタイムで追いかけようと、動画を見ていったのですが、最後の動画を見たときは、かなりの達成感があり、感慨深く感じました。かなり薄いファンである私が感慨深く感じるのだから、よりアイマスに愛着を持っているファンは、非常に感動をするのではないかと思います。

この企画は、ファンがニコニコ動画というコミュニケーションの場に擬似的に集まり、いっしょに騒ぎ、盛り上がろうという祭りであり、非常に共同体的な色彩が強いと思います。このような祭りに参加できるのは、ある程度熱心なファンだけで、アイマスに詳しくない人は、なかなか参加することが難しい企画だと思います。そのため、この祭りに参加した人数で、ある程度熱心なニコマスファンの人数が算出できるのではないかと思います。

ユニークユーザー数などは私は全く知らないので、動画の再生数などをざっと見た印象になりますが、今回アップされた動画をリアルタイムで、熱心に見て回っていた人の数は、2000-3000人位だったのではないかと推測しています。アクセス数の少ない動画は、公開されてから数時間経っても、2000位のアクセスしかなかったりしたので、熱心に見ていた視聴者の数はそれくらいで、ある程度追いかけていた視聴者も、1万人はいなくて、5000人くらいだったのではないかと思います。また、アイマス関係の動画は、わかむらPのような頂点プロデューサーの動画でも、なかなか10万アクセスを超えないので、ニコマス動画にある程度関心がある人の数は、5万人くらいが上限ではなのかと勝手に推測しています。

つまり、おそらくニコニコ動画の視聴者の総数からすれば、ニコマスファンの数はかなり少ないだろうと推測できます。しかし、人数は凄く多いわけではなくても、ファンあるいはプロデューサー同士の結束が強く、共同体としてはかなりまとまっているので、このような祭りを実現させ、盛り上がることができるのでしょう。

それは、逆に言えば、なかなか外から入りにくい、閉鎖的な共同体であると言えます。内部の結束が強く、独自の文化や慣習を発達させたために、理解するために必要な前提が増加し、MAD作者が増えるほどには、視聴者が増えない、つまり新規ファンが参入してこないのだろうと思います。多分、今回の企画も、アイマスニコマスにある程度精通していないと、それほど楽しめないのではないかと思います。

しかし、企画そのものが、一見さんと言うよりは、本当にアイマスが好きな人だけで盛り上がろうという趣旨のものでしょうから、その目的は、十二分に果たされたのではないかと思います。ファンの燃えさかる情熱が、巨大な祭りを作り上げてしまったという意味では、グラストンベリー・ロックフェスティバルやラブ・パレード、コミックマーケットなどに通じるものがあると思います。しかし、既存の祭りとは異なり、今回の祭りは、現実にどこかの場所に集まるのではなく、動画投稿サイトやWiki掲示板などのネット上で行われたというところが、非常に新しいというか、面白いところではないかと思います。


企画は非常に良く練り込まれており、オープニングには、ライブ会場で一緒にアイドルのコンサートを見ているときのような、臨場感あふれる動画を流し、エンディングには、感動できるような曲に合わせアイドルオールスターと参加プロデューサのコメントを付けたスタッフロール的な動画を流し、最初と最後を締めていましたし、25秒限定でMADを見せ、続きを見たい動画を視聴者に投票してもらうという視聴者参加型企画と、765Kmをアイドルたちが24時間で走るという、マラソン動画企画を軸に据えることで、24時間という時間を視聴者に意識させ、興味を惹きつけ続けようとしていました。


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また、24時間という長時間なので、時間毎に放映する動画のテーマを決め、バラエティー溢れる動画を用意することで、視聴者が飽きないようにしていました。そのテーマは、スペシャルイベント、架空戦記、バラエティ、音楽、映画、アニメ、講座、ニュース、スポーツ、ドラマ、自由、旅、ファミリー、料理など、本当に様々でした。アイマスという素材を使って、本当にありとあらゆる種類の動画が作られてきたことが、このテーマの種類の多さから分かります。

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アイドルマスターMADは、ある種モンタージュの実験場というか、限られた素材を使って、どこまで幅を広げられるか、どれだけ新しい表現や利用法を発明できるかという実験の場になっているようなところがあるように思います。それは、アイドルマスターというゲームのありとあらゆる要素をデータベースとして解体し、世界というデータベースにある無数の要素に接続し、関係づけ編集していく実験だと言えるかも知れません。

アイマスMADが登場したのは2007年2月だそうなので、わずか1年4ヶ月の間に、アイマスMADは質量共に驚異的な発展を遂げたことになります。何故これほどまでに急速な発展が生じたかと言えば、やはりYou Tubeニコニコ動画という動画共有サイトという発表の場が用意されており、MAD製作者が簡単に動画をアップし、視聴者から反応を用意に得られる環境が存在していたこと、そして製作者が他の製作者の使った新しい表現に刺激を受け、制作技術を高めあうという競争的な環境があったためではないかと思います。


このような環境下で、驚くほど短期間で、MAD動画で用いられる技術水準は飛躍的に高まり、なおかつMADのテーマや内容も、極めて多岐に渡るようになったのだろうと思います。そして、甚だしい「才能の無駄遣い」が爆発したMADのクオリティーの高さや面白さに魅了された人が増え、ニコマス界隈は、一つの共同体を形成するほどの勢力に成長したのだと思います。

ただし、これは言い替えれば、動画の技術水準が上がりすぎてしまったために、動画製作者が新規参入する際のハードルが上がりすぎて参入が難しくなること、技術水準が上がる余地がもう余りない、あるいは上げるために必要な労力が大きすぎること、目新しく新鮮なテーマを見つけるのが難しくなること、独自の文化や慣習、知識を持っていない者には理解しにくいことなど、発展の余地が狭まり、閉塞する段階まで、急速に到達してしまうことを意味しているだろうと思います。

古今東西、新しい文化は、発展するにつれ、初期の目新しさを失い、成熟しレベルが上がると同時に、変化・発展する余地が狭ばまり、次第に閉塞し、最後には限られた好事家以外には理解されず、奇異に映る、文脈依存的な状態に陥るのが常であろうと思います。発展の速度が速いと言うことは、その文化が持っている可能性を消尽する速度が速いということとほぼ同義だろうと思います。


しかし、現在のニコマス界隈は、まだ先に進むための勢いを十分に備えているようなので、閉塞はまだ先の話になるのでしょう。今後、バンダイナムコが、定期的に燃料を投下し続け、ニコマス界隈は、一つのサブカルチャー集団としての地位を確立するかもしれないですし、先のことは誰にもわかりません。願わくば、このまま活力を失わず、爆走し続け、面白いことを沢山やってほしい思います。

今回の企画では、私も本当に楽しませていただきました。これほどの大規模な企画を立て、実行したプロデューサーの皆様方には、心より感謝したいと思います。