ジョン・エヴァレット・ミレイ展

渋谷のBunkamuraミュージアムで開催されたジョン・エヴァレット・ミレイ展に行って来ました。私は、余りに有名な「オフィーリア」以外の彼の絵はほとんど見たことがなかったので、非常によい機会でした。

全体を見た印象としては、この人はラファエロ前派時代1850-51年に全盛期を迎え、後はどうでも良い絵を描き続けたという印象を受けました。彼の最高傑作オフィーリアは卓越したデッサン力で、草木の一本一本まで緻密に描いた細密描写が売りだった絵ですが、彼はその後すぐにこの細密描写を捨て、荒いタッチの絵ばかりを描くようになりました。しかし、タッチの荒さは、個人的には、単なる雑さの表れだとしか感じられませんでした。

また、彼の絵には、全く一貫性がなく、時期やテーマによって作風が変わっています。しかし、どの作風も、特に個性や面白みがあるというわけでもなく、単なる凡作ばかりという印象を受けました。

彼の作品をある程度包括的に見て感じたのは、彼がアカデミズムの世界で成功したにもかかわらず、ラファエロ前派時代の絵しか紹介されてこなかったのは、単にアカデミズム時代の絵がつまらなかったからなのだろうということです。個人的には、19世紀後半イギリスのアカデミズムの三巨匠フレデリック・レイトン、ローレンス・アルマ・タデマ、エドワード・ジョン・ポインターと比べると、ミレイは一枚も二枚も劣ると思いました。

しかし、生で「オフィーリア」を見るのは二度目ですが、この絵はさすがに名作中の名作だと改めて思いました。彼は真面目に描き続ければ、もっとすばらしい名作を生み出すこともできたのでしょうが、そうならなかったので勿体無いと思いました。