「ヴィルヘルム・ハンマースホイ 静かなる詩情」

国立西洋美術館で、デンマークの画家ヴィルヘルム・ハンマースホイの展覧会を見ました。この人は、19世紀末から20世紀はじめに活躍した人ですが、私はこの人のことを今回の展覧会で知りました。

この人の絵の特徴は、絵に人気がないことと、動きがないことと、彩度が低いことです。また、全般的に細部をぼかし、曖昧にする傾向がありました。

私がこの人の絵を見ていて思ったのは、多分この人は、普通の人とは全然違う風に世界を見ていたのだろうと言うことです。重々しい曇りの空と曇り空の彩度のない灰色の風景は多くの人にとって余り見たいと思うものではないですし、絵に描きたいと思うものでもないでしょう。自分の妻を疲れ切った表情で、緑色の肌で描いたり、友人達を闇の中に溶け組むように描いたり、ほとんど家具もないガランとした殺風景な部屋を書き続けるというのも、尋常ではありません。

画風や使った技術云々より、先ずそのような像を想像できたということが一番凄いと思いました。この人はおそらく、突然変異的な人だったのでしょう。

また、この人は、彩度が低い絵ばかり描く割りには、光に対して非常に鋭敏な感覚を持っている人のようでした。彼は戸外から窓を通じて部屋に入る光を好んで描きました。彼は、床に映った光だけでなく、床から壁やドアに反射した光や窓ガラスに反射した光も描いています。また、木々が逆光に照らし出され、木の葉の間から光があふれ出す絵や水面にキラキラと陽光が反射している絵も描いています。

やはり、どこの国にも凄い人というのはいるものだと思い知った、非常に見応えのある、見た後の手応えの大きな展覧会でした。