井手口彰典さんによる「萌えのマトリックス」

「國文学」2008年11月号の「特集『萌え』の正体」で、井手口彰典さんが、「音楽萌え −その諸相と東方・初音ミク−」という論考を寄せています。この論考の肝は、東方プロジェクトや初音ミクといった事例研究と言うよりも、音楽と萌えの関係を概観する分析フレームを提示することにあります。それが、「萌えのマトリックス」です。

井手口さんは、内在的萌え要素の有無、外在的萌え要素の有無を組み合わせ、音楽と萌えの関係を四つに分類しています。

  1. 内在的萌え要素とは、「予備知識なしで聴いても即座に萌えとの繋がりを感知することができる」ことです。(44頁) これは、アニメ声優独特の発声が使われていたり、歌詞に萌えで良く使われる属性などが含まれていることだろうと思います。
  2. 外在的萌え要素とは、「萌えを喚起しうる音楽外的な何らかの設定」です。(44頁)アニメやゲームのテーマソングや特定キャラクターを担当する声優が歌っていることです。

この二つの萌え要素の有無によって、井手口さんは音楽を四つの累計に分類しています。

このうちAとBが「テーマ曲、キャラソン」であり、AとDが従来の「萌えソング」であり、CがJ-POPや歌謡曲になるそうです。

井手口さんは、具体的な楽曲を挙げて説明していないので、イメージがつかみやすくなるように、私がこのABCDに合致すると思われる楽曲を以下に挙げておきます。




A:REDALiCE「グレイトなのです」


B:Uverworld儚くも永久のカナシ


C:湘南乃風「恋時雨」

D


D:MOSAIC. WAV 「ギリギリ科学少女ふぉるしぃ


以上の萌えマトリックスを使うと、萌え、あるいは萌えと密接な関わりがあるキャラクターと音楽の関係が、明快に整理が出来るのではないかと思います。初音ミクVocaloidの楽曲について考える際にも、非常に有効ではないかと思います。


國文學 2008年 11月号 [雑誌]

國文學 2008年 11月号 [雑誌]