巡音ルカでネタ曲よりオリジナル曲の方が人気が出た理由
現在、「巡音ルカ」を使った楽曲がニコニコ動画のランキングを席巻していますが、そのほとんどはキャラクター的要素やネタ的要素のないオリジナル楽曲です。これは、「初音ミク」や「鏡音リン/レン」、「がくっぽいど」が発売されたときとは、かなり異なった反応だと思います。
この現象を説明するために、私は以下のような仮説を考えています。
一つ目は、視聴者がVOCALOID 関連の動画に求めるものが、ネタ動画やカバー曲の動画、3DCGの動画よりも、オリジナル楽曲であるという、視聴者の嗜好を反映していることです。ただし、この仮説は「初音ミク」や「鏡音リン/レン」と「巡音ルカ」の発売直後の動画の違いを説明することはできますが、既にオリジナル曲人気が現在と余り変わらないレベルにあったと思われる2008年7月に発売された「がくっぽいど」を使った動画に、未だにネタ的なものが多いことを説明できません。
そのため、個人的にはそのような視聴者の嗜好だけでなく、巡音ルカのDTMソフトとしての完成度が高いため、ソフトの使用者がネタに走る必要がなく、視聴者が最も求める完成度の高いオリジナル曲をはじめから制作することができたから、オリジナル曲が大量に投稿され、オリジナル曲ばかりが人気を博しているという仮説を考えています。
検証したわけではありませんが、個人的にはVOCALOIDのDTMソフトとしての完成度の低さと、投稿動画に占めるネタ的動画の比率には、強い相関関係があるのではないかという印象を受けています。「鏡音リン/レン」は、特に発売初期にはネタ的な曲ばかりが人気になりましたが、それは余りに滑舌が悪く、聴いていて耳障りであったため、普通に聴けるような歌を歌わせることが難しかったからだろうと思います。
これは「がくっぽいど」にも言えることで、「がくっぽいど」を使ったオリジナル曲で、なかなか人気曲が出てこないのは、歌が不自然で耳障りなので、観賞用には適さないからではないでしょうか。
観賞用の楽曲に使うことに適さないVOCALOIDは、歌が不自然でも問題がないネタ的な使い方をするしか選択肢がないとも言えます。自然に歌を聴かせるために必要な調整技術が高く、調整の手間がかかればかかるほど、特定の声質を使いたいという特別な理由がなければ、作り手が調整が簡単な「初音ミク」を使う傾向が顕著になるだろうと思います。逆に言えば、そうでないVOCALOIDは観賞用のオリジナル楽曲ではなく、歌が不自然でも余り問題がないネタ的な使われ方をされることが多くなり、結果としてネタ的な動画の比率が高まるのではないかと思います。
「巡音ルカ」は、おそらく非常に調整がしやすく、作り手が最初から観賞に堪えうる自然な歌を歌わせることができたため、観賞に堪えうるオリジナル楽曲が発売直後から大量に投稿された、そしてそれらの楽曲の魅力が不自然な歌によって台無しにされることがなかったため、発売直後と言うことで「巡音ルカ」を使った動画に注目していた多くの視聴者に気に入られ、その結果として「巡音ルカ」を使って作られたオリジナル曲がランキングを席巻したのではないかと、私は考えています。
VOCALOID2 キャラクターボーカルシリーズ03 巡音ルカ MEGURINE LUKA
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