木村泰司氏のプロフィール

漫棚通信」さんで、木村泰司氏が怪しすぎるという話が出ていました。この人は、著書の『名画の言い分』という本が話題になっているようで、私も色々なところで見かけて胡散臭さを感じていました。というわけで、少し調べてみました。

先ず、彼のプロフィールです。

木村泰司西洋美術史家)

1966年生まれ
 米国カリフォルニア大学バークレー校で美術史学士号を修めた後、ロンドンサザビーズの美術教養講座にてWORKS OF ART 修了。
 ロンドンでは、歴史的なアート、インテリア、食器等本物に触れながら学び、合わせてヨーロッパの上流階級における正式なマナー・社交も身に付ける。


ちなみにこの方が修了したというのは、ここですね。

Sotheby's Institute of Art, London. Fine & Decorative Art.

This programme offers an intensive immersion into the challenges of connoisseurship and the documentation of art.

Based on Sotheby's original curriculum, The Works of Art Course, and concentrating principally on Old Master paintings, modern art, furniture and ceramics, the MA in Fine and Decorative Art teaches connoisseurship, a skill rarely featured in other academic settings.

Our teaching draws on the wealth of art objects available at Sotheby's auction house, in London's museums, in public and in private houses and collections for first-hand study.

This visual and hands-on approach, supported by a thorough grounding in the materials, techniques and physical properties of art objects, forms a foundation for object-based research and the development of professional expertise.

SEMESTER 1: 12th September - 3rd December, 2007

  • Old Master paintings and connoisseurship
  • Modern art and collecting
  • Ceramics and trade
  • Furniture and interiors
  • Cataloguing and professional practice
  • Techniques and materials
  • The historical art market
  • Country house studies

SEMESTER 2: 7th January - 13th June, 2008

* Subject areas as above

SEMESTER 3: 16th June - 14th November, 2008

* Dissertation

MA degrees と書いてあるので一応修士に相当するようですが、たった一年半しかないようですし、絵画からインテリアまでありとあらゆることを勉強するようなので、美術史の専門家としての訓練を受けたというわけではないようですね。

ちなみに、この方は、CiNiiで検索した限りでは、少なくとも日本語では論文を一本も書いていないようです。

(S) 今はどのようなお仕事をされていて、これまでどのようなキャリアを経て、成功されたのか教えて頂けますか?
(N) 帰国後、画廊勤務そして美術商をしている際に、お客様から「ぜひ美術の話をじっくりと聞きたい」などと請われるうちに、いつの間にか授業や講演で西洋美術の話をするようになり、現在に至ります。

セミナーズ

大学の学部と修士で基礎的なことはきっちり学んだのでしょうが、その後は実務に携わっていたようですし、論文は書いていないようですし、美術史家を名乗るには微妙なキャリアではあります。おそらく著書も、色々な二次文献の記述を、まとめたというものなのでしょう。

絵画は感じるものではなく、理解するものだと彼の考えは、村上隆に通じるものがありますが、向こうの上流階級にとってはそうなんでしょうね。絵画を読むという類の本は、今まで沢山出ていると思いますが、著者のプロフィールの華やかさやハッタリの効いた主張が、人気の秘訣なのでしょうね。