文学

メルヴィル『代書人バートルビー』

国書刊行会の『バベルの図書館』の中の一冊『代書人バートルビー』を読みました。前書きはボルヘスということで豪華です。内容は、ある法律事務所に雇われたバートルビーという男が、最初はきちんと仕事をしていたのに、次第に「しない方が良いのですが I wo…

嶽本野ばら 『ロリヰタ。』2004年

嶽本野ばらの『ロリヰタ。』を読みました。この本には、表題作の中編「ロリヰタ。」と短編「ハネ」が収められています。「ロリヰタ。」は、男性なのにロリータファッションを好んで着る作家が、あるモデルの女の子と恋に落ちるが、その女の子は9才の小学生…

円城塔 『Self - Reference ENGINE』 2007年

話題になっていたSFなので読んでみましたが、途方もない作品でした。内容は、時間や因果関係、自然法則を操作することが出来る巨大知性体が存在する世界での、諸々の出来事を描いたものです。この作品はSelf Reference つまり自己言及を扱った作品だろうと思…

埴谷雄高『死霊Ⅲ』講談社文芸文庫、2003年

埴谷雄高の『死霊』を読み終えました。第七章「最後の審判」は、黙狂の矢場徹吾が首猛夫に多元宇宙の話をする章です。第八章「月光の中で」は、黒川建吉が津田安寿子に三輪与志の話する章です。第九章「虚体論−大宇宙の夢」は、津田安寿子の誕生会で黒服と青…

ジーン・ウルフ『デス博士の島その他の物語』

非常に評判になっていたSFなので読んでみたのですが、個人的にはどの短編のテーマや狙いも分からずピンと来ませんでした。色々な仕掛けがてんこもりなのは分かるのですが、それを読み解こうという気概がありませんでした。書評 「日々是研究所」 「★究極映像…

グレッグ・イーガン『万物理論』

グレッグ・イーガンの『万物理論』(創元SF文庫、2004年)を読みました。イーガンを読むのはこれが初めてです。600頁ほどの長い小説なのですが、膨大なSFアイデアがこれでもかと投入されており、密度は非常に濃いです。話は、サイエンスジャーナリストの主…

朦朧法

朦朧法 (もうろうほう) は怪奇文学の表現手法の一つ。怪異についてはっきりとした描写をせず、曖昧な描写や暗示や仄めかしを積み重ねることによって、読者一人一人が思い思いの恐怖のなかに落ち込んでいくことを狙った手法。これを愛用した作家としては、ヘ…

飛浩隆『象られた力』

飛浩隆さんの『象られた力』を読みました。この短編集は、80年代など昔書かれた作品を収録しているそうです。最初の「デュオ」は、身体がくっついた天才双子ピアニストの背後にいる存在に調律師のイクオが気づき、その存在から双子を解放しようとする話で…

飛浩隆『ラギッド・ガール 廃園の天使II』

『グラン・ヴァカンス』の続編である中編集『ラギッド・ガール』(2006年)を読みました。収録されているのは全5編で、『グラン・ヴァカンス』では明らかになっていなかった様々な事実が明らかになっていきます。最初の短編『夏の硝子体』は、『グラン・ヴ…

飛浩隆『グラン・ヴァカンス 廃園の天使I』

飛浩隆さんのSF長編小説『グラン・ヴァカンス』(ハヤカワSF シリーズ J コレクション、2002年)を読みました。この作品は、次巻の『ラギッド・ガール』と共に「廃園の天使」シリーズを構成しています。この作品の舞台は、「夏の区界」というコンピューター…

雨宮処凛『EXIT』

現在プレカリアート関連の活動などでご活躍の雨宮処凛さんの『EXIT』(新潮社、2003年)という小説を読みました。この小説は、ひきこもりをしている女性が、インターネットで、リストカットなどの自傷を行う人たちや精神的な病を患っているメンタルヘルス系の…